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特別企画VOL.4 業務と最新技術の融合と調和を SREホールディングス執行役員兼不動産流通部門部門長 東毅憲氏 人材育成の時間を創る   

 不動産売買仲介担当者が住まいの提案の傍らで、今や1万種類に上るといわれる住宅ローン商品の知識に習熟し続ける。それは現実的ではなく、もはや不可能に近い。そこで、企業間の分業ともいえる外注化は、有力な選択肢になる。ソニーグループで不動産売買仲介を手掛けているSREホールディングス(SRE不動産、東京都港区)執行役員兼不動産流通部門長の東毅憲氏に、iYell(東京都渋谷区)提供の住宅ローン商品提案代行サービス『いえーる ダンドリ』の活用を始めた狙いを聞いた。

 ――外注化を始めた。

 「当社は創業当初から売り主のみに焦点を当てた代理人となって〝できる限り高値で迅速に売却したい〟という顧客の願いの実現に取り組んでいる。両手取引に比べると商談の件数自体を積み上げねばならない。件数が増えれば比例して1人当たりの業務負荷が高まる。そこに課題感を抱えていた。不動産テック事業も展開し、AI(人工知能)による価格査定などを通じて推進している業務効率化で、更なる取り組みが必要になってきた背景がある」

本来業務を精緻化

 ――1人当たりの負荷が。

 「数年前から新卒社員の採用を開始した。これに合わせて買い主対応部門の担当者を増員している。自社の預かる売却物件を買い主に紹介するのではなく、ほかの不動産会社の売却物件を紹介する形を取っている。当社では独自の〝エージェント制度〟を採用し、売り主と買い主のどちらか一方を代理して担当業務に注力することで、顧客満足を高めている。かなりの時間を取られる付帯の住宅ローン商品の提案を外注化できれば、不動産エージェントとして本来の業務が精緻化すると考えた」

 ――業務を精緻化する。

 「ただし、『いえーる ダンドリ』は、習熟したエージェントが活用している。一方、新卒や若手の人材は逆に、その活用を目標としてもらい、従来通りの方法で商品探索や提案をさせている。まずは、一定程度の経験を積み、提案業務の筋道や流れを理解させる。業務の効率化や顧客満足を一層高めるために外注化を選択した意味を理解できなければ、単純な外注化になり、当社に知見を蓄積できない」

丁寧に伝える

 ――若手はまず学びから。

 「何事でも新しいことを導入すると一定程度に抵抗意識が芽生える。導入した背景や意図、期待できる効果を丁寧に伝えることが非常に大事だと思う。接客の場面で通じることでもある。活用の意味を各自が自身に落とし込めれば業務の姿勢が主体的になる。グループのソニー銀行や提携銀行だけでなく、他行の商品も提案する意味を理解する。選択肢を増やすことで、顧客満足の一層の向上につながることを肌で感じてもらう」

 ――顧客満足の向上で。

 「業務効率化で創出した時間を人材育成や外部講師を含めた研修などに充てている。『いえーる ダンドリ』は、買い主、iYell、当社の3者間チャットのやり取りで手続きの進ちょくを把握するが、業務の全体の流れを理解している前提があればこそ、効率化の効果を実感できる。活用を始めてから外注化の効果で商談件数が増えている」

最終的には人の力

 ――商談件数が増えた。

 「時間や手間の掛かる定型的な業務を最新サービスの活用で効率化すると、営業担当者が提案力を磨く時間に割けて力を発揮し、活躍しやすい。やはり、顧客の潜在ニーズや心の機微をつかむなど、最終的には〝人の力〟が問われる。営業の在り方を常に問い続けている。スマートな働き方を求心力に新卒採用など優秀な人材を増やすと共に、個々のエージェントの〝質〟を向上させていく」