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彼方の空 住宅評論家 本多信博 ◇71 異色の団体たれ 思いはひとつ 志は秘めてこそ花

 不動産業界には次々と新しい団体や組織、勉強会が誕生する。それらの多くが不動産市場の変革をめざしている。 「不動産業界に対する国民の信頼を高めたい」「プロフェッショナル化を進め、不動産営業社員の社会的ステータスを上げたい」「女性の元気としなやかさで不動産業界のイメージを明るくしたい」などその目的は様々である。

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 団体同士の連携やコラボレーションも見られる。例えば不動産女性塾(北澤艶子塾長)と大阪府不動産コンサルティング協会女史会(妹尾和江代表)は11月7日・8日、淡路島への親睦旅行とコラボ研修会を実施した。前回の有馬温泉(19年8月)に次いで2回目となる。今回も不動産女性塾からは東京の会員が多く参加したが、東京と大阪では需要の密度など不動産市場をめぐる環境が大きく異なっている。それだけに、互いの交流を深めることが大きな刺激となっているようだ。

 それにしても、不動産業界にはいまだに〝負〟のイメージがつきまとう。これには不動産の〝不〟の文字が関係しているかもしれない。不動産は英語では「リアルエステート」。不動産業者は「リアルター」。「real estate」だから現実の財産という意味になり、マイナスイメージはどこにもない。

 しかし、いまさら不動産という言葉を変えることはできない。そこで、女性塾では日本の不動産業界のイメージを変えるためには「若くて凛とした女性たちがこの業界に魅力を感じ、数多く参入し活躍することが重要」との思いから、先輩女性たちが模範を示すため頑張っている。

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 不動産流通業界に真のプロフェッショナルを輩出することで、社会的信頼を高めたいという思いから昨年発足したのが不動産流通プロフェッショナル協会である。不動産エージェントのあり方、不動産仲介とコンプライアンスの問題などについて真摯な勉強会を重ねながら、不動産流通推進センターに対する政策提言などを行っている。

 同センター認定の公認不動産コンサルティングマスターと宅建マイスターの両資格者で構成している。会員数はまだ少ないが、あくまでも高い志をもって流通業界に一大変革を起こしたいという熱い意気込みを感じさせる団体だ。

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 もう一つ、最近発足した団体がある。全国定期借地借家協会(増井聡彦代表)である。

 18年に全国定期借地借家権推進機構連合会から脱退し全国定借機構ネットワークという情報交換会を経て今年10月に正式発足した。11月22日、正式発足後初の会合を開いた。 税理士の本郷尚氏、にじゅういち出版の宮沢隆社長、ハローニュースの吉松こころ社長、定期借地権推進協議会の大木祐悟運営委員長などの論客がゲスト参加し活発な議論を展開した。

 同協会最大の特色は〝侍揃い〟というべきか、個性豊かなメンバーで固められていることである。全国定期借地借家権推進機構連合会からの一斉脱退という苦難を経験した仲間でもあり、結束力の強さも魅力である。定期借地借家の普及促進という明確な目標に向け、志を一つにした組織力に今後注目したい。

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 強烈な個性ということでいえば、11月27日にお披露目会を東京の椿山荘で開いた「ひと・住文化研究所」(鈴木静雄代表)は断トツである。なにしろ代表の鈴木氏はリブラン創業者で異色の経営者といわれる人物。研究所設立の目的をこう語る。

 「日本は戦後、国も業界も人と住まいとの深い関係に思いを致すことなく突き進み、最悪の日本列島を生み出した。今や残された時間は少ない。劣悪な地域、無思想の居住環境を再生する処方箋は、心ある不動産業者が声を上げ、立ち向かい、物事の本質を抉り出すことだ」。

 鈴木氏は今年『狂愚三昧の経営』という本を出版。世の中を真に改革しようと思えば狂うしかないのだという。この言葉は重い。実のある成果を上げるためには異色の団体を自認し、ときにはその志を秘めることも戦略上重要だ。