総合 売買仲介

不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編(13) ~畑中学 取引実践ポイント~ 公的機関でも盲目的に信用しない「市区町村役場と法務局の基本姿勢と調査方法」

 現地調査を終えたら市区町村役場での法令上の制限の調査と法務局での権利の調査を行う。両方共に現地調査前にネットで用途地域の確認や、登記情報の取得など事前調査をしておくが、現地調査で得られる情報によって更なる調査が必要な事項や、確認すべき事項が出てくるので本格的にはその後になることが多い。

 この2つの調査での基本姿勢のポイントは2つある。

 1つ目は公的機関での調査結果とはいえ、盲目的に信用はせず、現地調査の結果などを踏まえ自分の頭で採用すべき結果かを判断をすることだ。理由は市区町村役場等が間違えていたり、現状の変化に追い付いていないことがあるからだ。筆者も市区町村役場で取得した建築計画概要書がまったく別のものであったり(別の建物が搭載されていた)、公図上では無地番だった土地がPC化の際に地番を記入しなかっただけで実際は地番があり所有者がいたこともあった。調査結果で何か違うなと感じることがあれば、更なる調査をしてみて結果の採用の是非を判断してみることが肝要だ。

 2つ目は理解が追い付かない、疑問を感じる点は、なんでも担当者に質問をして解消することだ。顧客へ分かりやすく説明するには、私たちで理解を万全にして疑問や不明な点をなくさなければならない。よく分からずとも「こんなことだろうな」と勝手に解釈することがないようにしたい。そのようなときは私らの解釈が間違っていることが多いので注意をしたい。

 これら2つは多少経験を積むとスルーしがちになるが、調査の基本姿勢として意識をしておくと失敗が少なく済む。

 続けて市区町村役場と法務局での調査方法の違いだ。ポイントは話の聞き方で答えが変わるか、変わらないかだ。市区町村役場では調査をする法令(主に都市計画法や建築基準法など)の解釈や運用を任されているため、こちらからの話の聞き方や、知識程度によって回答が変わることが多い。

 特に再建築の可能性についてはそうで、普通に聞いたら「前面道路が建築基準法外の道路なので再建築はできません」で終わる内容でも、こちらから「道路所有者と道路に接する土地所有者に道路化する同意を得られるなら再建築できますか」と聞くと「それであれば建築審査会の同意を得られれば再建築できます」と更なる内容を教えてくれることがある。こちらの聞き方や知識が問われてくる。一方で法務局では権利状況を確認するだけになるので、話の聞き方で答えが変わるということはない。この点に気をつけて調査をしたい。

【プロフィール】はたなか・おさむ=武蔵野不動産相談室(株) 代表取締役。2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川県宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。