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大言小語 柱をなくした日本

 「社会の底が抜けている」とは言い得て妙である。生きているのにその実感がない。働いているのに世の中の役に立っているという自信がない。だから仕事を心から楽しめない。今はそんな人が多いのではないか。リタイアし、近所を散歩しているお年寄りはどうなのか。思いたくはないが、病気にならないことだけが生きがいなら寂しすぎる。

 ▼日本社会全体に元気がない根本要因は日本の家族と地域の疲弊にある。どちらにも強固な柱が欠けている。そればかりか一国のリーダーの支持率が30%台というのだから、この国の政治も柱不在だ。企業の柱は経営理念である。明確なビジョンをもつ企業は強い。では不動産業界のビジョン(柱)とは何か。「国民から信頼される業界へ」では寂しすぎる。

 ▼日本が柱をなくし始めたのは戦後である。独立後も国の防衛を敵国だった米国に頼り、経済復興だけに走り続けた報いとして、国家として民族として人間としての誇りと文化を育てることを忘れてしまった。柱をなくした日本の再生こそ、住宅・不動産業界のビジョンである。家族と地域の絆が国の土台であり、そこに大きな貢献を果たすのが不動産業界である。

 ▼我が国の文化の柱には伝統的な木造軸組工法がある。観光でやってくる外国人が神社や寺院、京町屋、古民家にあこがれるのも日本文化の象徴が和風建築だからである。文化こそ精神の柱となる。