政策

「ひととくらし未来研」第3シーズン始動 ストック管理、金融が論点に 23年3月に提言とりまとめへ

 不動産業による新たな地域価値創造の形を具体化し、拡大できるか。国土交通省は10月13日、「『ひと』と『くらし』の未来研究会」第3シーズンを始動した。空き家の管理・活用や多様なファイナンスの活用などを論点に、〝共創〟の課題克服に向けた検討を深める。23年3月ごろをめどに、議論の総括と提言のとりまとめを目指す。

 同省では、不動産業が地域の新たな価値創造に寄与することを目的に21年5月に同研究会を設立。今年6月には、〝共創〟の更なる拡大に向けた取り組みを第2シーズンの中間整理としてまとめた。

 第3シーズンでは、中間まとめで示された共創の表彰制度創設と、「課題克服」に向けた議論を展開する。峰村浩司不動産・建設経済局参事官は〝場の提供者〟である不動産業者の役割の重要性を示した上で、「不動産業の未来に関わる3つの論点は(1)コミュニティ財としての空き家等の管理・活用、(2)築年数の古い建築物の活用の円滑化、(3)多様なファイナンスの活用。活発な議論を」と呼び掛けた。

DAO型の管理手法も

 今回は、論点(1)のコミュニティ財の管理・活用に関連し、「Web3.0と不動産業・不動産管理業」について議論を深めた。事務局からは共助・共創を支える仕組みとして一般財団・社団法人、認可地縁団体による共同管理、コモンズ協定制度などを紹介。不動産賃貸業の新形態として、サブリース事業によってまちやエリアの再生・活性化を目指す「賃貸業3.0」の動きも見られるとした。

 今回の議論では、ブロックチェーン技術を活用したDAO(分散型自律組織)の不動産活用に着目。組織の理念の賛同者が意思決定に関与できる機能を持つガバナンストークンを保有し、組織運営に参画するというもの。物件をオーナーが単体で管理するのではなく、入居者および出資者が自律的に運営に関与するのが特徴だ。「入りやすくて出やすいシェアハウス」の実現を目指す巻組(宮城県石巻市、渡邊享子社長)は、東京・神楽坂でDAO型シェアハウスプロジェクトを展開。その取り組みから、前払式支払手段を活用することで運営資金を事前入手できる点や価値向上に取り組む関係者が拡大する可能性を挙げた。

 同プロジェクトに関わるガイアックスの廣渡裕介DAO事業開発マネージャーは、資金調達の可能性などについて言及し、「NFTを持つ90%の人がこの物件に住まない人。彼らが家賃分を払いながらコミュニティを盛り上げており、多くの資金調達の可能性がある」と指摘。更に、中央集権ではないという特性から、当事者同士が不動産課題の解決策を探る新たな管理設計につながると展望した。

 同研究会のコアアドバイザーからは「定住と宿泊の中間の役割を担えるのか興味深い」や「多様なメンバーが関わる中でDAOを運営するマネジメント上の難しさは何か」などの意見や質問が出された。巻組の渡邊享子氏は、分譲マンションの管理組合において未来へ向かった取り組みに対するインセンティブが示されていない現状を指摘。「自律的に管理に注力した人に価値が還元される仕組みをDAO運営で示したい。地域の関係性に影響力を持つ分譲マンションの業界団体等とも理解を深めたい」と述べた。