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~畑中学 取引実践ポイント~ 現状、適法性、権利、維持管理で全体把握  「現地調査の方法とポイント(1)」不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編(10)

 不動産は必ず現地に足を運び、漫然とではなくポイントを確認しながら満遍なく見て調査をしていくようにする。 現地調査は、(1)目視と(2)簡易計測の2つで行うのが基本となる。(1)目視は目で見て確認をすること。不動産の現在の状況をそのまま見て確認をすれば大丈夫だ。見ても分からないなら「分からない」で問題はない。(2)簡易計測はメジャーを持って敷地の周回や接道の長さを測ることだ。正確さよりも数多く測ることにこだわった方がいい。現地調査は説明をするための調査であり、説明をするために自分自身で不動産の全体像を把握するためのものだ。したがって一点一点しっかり確認をするべきだが、ミスを恐れずに多くのことを確認する方が不動産の全体像をつかみやすく調査結果につながっていく。

 確認ポイントは居住用、収益用、その他の不動産と種別によって多少異なるが、(1)現状、(2)適法性、(3)権利、(4)維持管理、この4点となる。

 (1)現状では、不動産が物件概要書の記載事項と異なる点がないのかを確認していく。基本は不動産を四周から立地や敷地形状、建物位置、方位などを見ることだ。物件概要書は法令上の制限の基礎資料だ。見比べて異なる点があるのであれば、法令上の制限で違反している可能性が高い。

 また、物件概要書の記述も疑ってかかった方がいいだろう。

 居住用不動産では所有者本人か賃借人、親族、それとも空き家かなど利用実態も確認する。収益用不動産ではレントロール記載通りに各部屋に賃借人やテナントがいるのかを見ておこう。気になれば、昼夜で2回確認をしてもいい。これら利用実態は契約条件にも係る点なので注意しながら確認をする。

 (2)適法性は、主に建築基準法と都市計画法が守られているか現地で確認する。建築基準法では建物が周辺建物と比べて異様に大きくないか、2階建てエリアなのに3階建てではないかなど規模や高さ、形態を見ていく。登記事項証明書とも照らし合わせておきたい。該当するなら建ぺい率、容積率違反の可能性が高いので法令上の制限を確認したい。また、建物以外にも土地に定着している物置きなど工作物があるのなら登記が必要かもしれない。続いて再建築可否に影響する接道の長さや道路幅員も見ておく。

 計測で接道の長さは2メートル以上、道路幅員が4メートル以上ないのなら、後日測量士などを交えて詳細確認が必要だ。それと前面道路が行き止まりのある道路なら私道の可能性が高い。その場合、所有者からの通行や埋設管の掘削工事の許可も必要となる。承諾が取れないなら資産価値は下がってしまう点に注意したい。都市計画法以降は次回としたい。

【プロフィール】

 はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株) 代表取締役。

 2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。