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東急不、鹿島「九段会館テラス」竣工 歴史的建築と先端技術を融合 開業は10月、健康経営を支援

 東急不動産と鹿島建設は、「旧九段会館」(東京都千代田区)を一部保存しながら建て替えたオフィスビル「九段会館テラス」を7月に竣工し、10月1日に開業する。登録有形文化財の建物を可能な限り保存・復元しながら、現代的なニーズを踏まえ、先端技術の活用による利便性向上や健康経営支援のサービスなども取り入れた特徴的な施設に仕上げた。東急不動産の根津登志之執行役員は、「登録有形文化財の保存・再生という事業は当社としても初の試みで、事業採算性との両立も課題となった。更に着工後間もなくコロナ禍が始まり、オフィス環境が一変する中で、新しい働き方に対応した『来る意味のある、来たくなるオフィス』の体現を目指した」と方針を説明。様々な社会的要請に応えた施設として、運営に自信を示した。

 「九段会館テラス」は、東京メトロおよび都営新宿線の九段下駅から徒歩1分の立地で、内濠を挟んで北の丸公園・日本武道館と隣接。高い交通利便性と共に、周辺は水と緑の豊富な環境であり、施設コンセプトは「水辺に咲くレトロモダン」と定めた。

 新施設は地上17階地下3階建て。旧九段会館の建物や建材、意匠を活用・復元した「保存部分」と、先進的な新築オフィスビルの「現代的空間」、両者をつなぐ「調和的空間」で一体的に構成されている。新旧の建築の全体が違和感なく融合するよう、〝レトロモダン〟な空間デザインを目指した。最新性能やコンセプト、立地特性などへの好評価から、「現代的空間」のオフィス賃貸は現在9割が成約済み。「保存部分」のクラシックオフィスも約半分で入居企業が決定している。

当時の建材を一部活用

 「保存部分」は、旧九段会館の建材を一部活用しつつ、過去の写真資料などを基に可能な限り建築当初のデザインを維持・復元。以前の用途を踏襲した大型ホールや応接室等のほか、クラシックなデザインの貸し会議室や小規模オフィスも設けている。

 一方、「現代的空間」は2~17階を1フロア約2500m2の賃貸オフィスとするほか、1階~地下1階は東急不動産の展開するシェアオフィス「ビジネスエアポート」が入居して幅広いオフィスニーズに応える。

 また先端技術や機能を多く導入し、コロナ禍を踏まえた直近のニーズにも対応を図る先進的なオフィスに仕上げた。同社の構築したデータ連携基盤「スマートシティプラットフォーム」により、施設内の混雑状況を検知するセンサーなどIoT設備を一元的に運用。国内のオフィスビルとしては初めて、透光率を操作できる調光ガラス「VIEW Smart Glass」も採用した。

 加えて、入居企業の健康経営を支援する〝ウェルネスオフィス〟づくりにも注力。建物内に、モノサス(東京都渋谷区)の手掛けるオーガニックな職域食堂や、複数の医療機関の入居するクリニックモール、豊富な植栽と健康家具を配置した屋上庭園など、オフィスワーカーの心身の健康に配慮した施設を多数そろえている。