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~畑中学 取引実践ポイント~ 不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編(7) 隣地所有者の立ち会いで境界合意を 「測量図の種類とその見方読み方 (1)」

 一戸建てや土地の売買では買主に勘違いや不利益を与えないために隣地との境界確認が済んでいるか、現状の面積はいくらかを知るために測量図を取得して買主へ説明をする必要がある。測量図とは測量をした時点における隣地や隣接する道路との境界、接する周辺の長さ、土地の面積や形状、範囲が記されている書類だが、大きく分けて(1)確定測量図、(2)現況測量図、(3)地積測量図の3種類がある。どれも土地家屋調査士や測量士など有資格者をもって測量を行うものだ。今回はこの違いについて述べていきたい。

 確定測量図は、すべての隣地所有者の立ち会いを得て境界確定された測量図だ。隣地が官有地なら公的機関との立ち会いや協議を経て境界を確定する。現時点で境界の確定により隣地との紛争はなく、土地の面積や範囲などが確定しているので数字や形状等への信頼性は高い。また、境界が確定することで土地を分ける分筆ができるようにもなる。不動産取引においては、原則売主と共にこの確定測量図を取得して、買主への説明や交付を行うことになる。

 ただし、隣地所有者の立ち会いや日程等の調整があるので費用や時間がかかり、必ずしも境界の合意が得られないことがあるので注意したい。筆者も隣地所有者がご高齢の女性で「息子からどんな理由があっても印鑑を押すなと言われているので押せない」と境界の合意が得られなかったことがある。このように確定測量では隣地所有者によっては得ることができず、掛けた費用と期間が無駄になることがあるので、話を進めるにはそのリスクも合わせて売主へ説明すべきだ。

 現況測量図は確定測量図以外の測量図で、主に隣地所有者の境界確認を得ていない測量図のことだ。現地にある境界標や想定される境界線などをもって計測し、おおまかな土地面積や範囲を把握するものだ。期間も数日あればできるので、不動産取引では販売前には取得しておきたい。

 地積測量図は、分筆等の登記の際に添付される測量図で、法務局で誰もが確認取得できる測量図のことだ。不動産取引では必ず取得すべき書類になる。2005(平成17)年の不動産登記法の改正以降は、確定測量図を基にしているため測量図としての信頼性は高い。

 一方で改正前は残地求積といい、分筆する土地を測量すれば残る土地は測量をせずともよい、という方法で地積測量図を作成していることもあり、面積や形状範囲が当てにならないことがある。参考とするかは見極めが必要だ。

 以上、不動産取引に関わる測量図の種類について述べたが、次回はその見方や読み方について述べていく。

【プロフィール】

 はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株) 代表取締役。

 2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストでは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。