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三井不が千葉・柏の葉スマートシティ加速 がん研究センターと連携のホテル 新たな診療モデル創出目指す

 三井不動産が、千葉県柏市で行政や大学などと連携して取り組んでいる「柏の葉スマートシティ」において、〝アカデミアとの連携〟に基づく開発を加速している。そのコンセプトを具体化した施設の一つとして7月1日、国立がん研究センター東病院の敷地内に「三井ガーデンホテル柏の葉パークサイド」が開業する。同病院との連携の下、国内外から訪れるがん患者をサポートすると共に、先端医療研究の支援や新たな診療モデルの創出を目指す。

 同ホテルは同病院に隣接しており、診療等のため訪れるがん患者やその家族を主な宿泊客と想定して、様々な機能とサービスを取り入れた7階建て・総客室数145室のホテル。6月20日に開かれた施設発表・内覧会で、三井不動産柏の葉街づくり推進部長の山下和則執行役員は、「柏の葉スマートシティ」の概要と併せて、「研究機関や協力企業との連携によりがんの克服・治癒に貢献し、安心して治療を受けられる環境を実現する。また、こうしたハードアセットの開発により、街をプラットフォームとして整備し、〝健康になる街〟〝イノベーションが生まれる街〟へと進化させていく」との構想を語った。

 内覧会には、同病院の大津敦病院長と国立がん研究センター先端医療開発センターの土井俊彦センター長も参加し、同ホテルの狙いと意義を説明。両氏によると、同病院を訪れる新規がん患者数は年間9000人以上に上り、遠隔地の患者も多く、移動や宿泊が患者の負担となっている。

 他方、海外の先端医療施設では宿泊施設が併設されているケースが多い。そこで今回、同社と同研究センターおよび同病院が連携し、患者の距離的負担・滞在時負担を軽減することで先端治療へのアクセス性を向上させることが、同ホテルの狙いの一つだ。

 その一環として、同じ敷地内ながら、同ホテルと同病院との間でシャトルバスを運行。またホテル内に病院の外来拡張エリアを設け、病院にはホテルの宿泊予約ブースを設置するなど、両施設の円滑な利用を促す。更に、「医療の場として世界にインパクトのあるがん治療・医療の提供を目指す」(大津病院長)、「目指すものは共創であり、新たな診療モデルの確立へ向け、我々もホテルを支援していく」(土井センター長)と方針を語る。

デジタルサービスで患者支援

 特徴的な取り組みの一つが、他企業とも連携してウェアラブルデバイスを活用し、本人同意の下で提供するヘルスケアサービスだ。NTTデータの開発した生体データ管理機能で、宿泊患者の状態を両施設の専門スタッフが確認し、医療やサービスの最適化に活用。またリンクアンドコミュニケーションによる食事管理機能で、体調の把握や栄養面のサポートも行う。

 宿泊患者のメンタル面にも気を配り、資生堂ジャパンの協力で、がん患者向けの「メイクアップアドバイスセミナー」を定期的に開催。症状や治療による外見変化の悩みを軽減し、QOL向上につなげる。同ホテルには専任のケアスタッフが常駐するほか、ホテル従業員に対するがん知識の教育も連携して行う。

 このほか、同病院には中国をはじめ海外からの患者も多く訪れていることを踏まえ、同ホテルでは医療ツーリズムへの対応も重視。長期滞在用に洗濯機やキッチン付きの客室を設けたほか、館内の案内板等には英語のほか中国語などの記載が随所で見られた。外国語で周辺エリアを紹介したマップも用意する。