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~畑中学 取引実践ポイント~ 不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編(2) 定義押さえて勘違いを無くす 顧客との共通認識は必須

 売買仲介の仕事をする際に早めに「不動産の定義」について理解しておくとよい。

 「エアコンは付いていると思っていました」「物置は庭の一部なので置いておきます」など、売買当事者(売主、買主)が動産を不動産と勘違いしてトラブルになることがあるからだ。筆者もよく経験をした。しかし、不動産の定義を理解しておけば、売買対象となる不動産には何が該当するのかを売買当事者へ説明ができ、その理解が得られれば、トラブルに遭うことが少なくなる。売買仲介をスムーズに進めるためには、重要な事柄だろう。

 では不動産の定義はどのようなものか。民法には不動産の定義についてこのように書いてある。

 民法第86条1項「土地及びその定着物は不動産とする」

 民法第242条「不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する」

 定着物とは建物や樹木など、土地に離れないようにしっかりとくっついていて動かし難い物だ。

 また、物理的な視点以外にも、取引の性質を考慮して機能的な視点も加味して決定される。そのため境界を隔てる門塀や垣根なども離すことが容易でも定着物となることがある。

 「従として付合」とは不動産に付着した動産ではあるが分離ができない、もしくは分離するには多大な経費や労力がかかることを指す。建物内にあるキッチンや造作家具などが、「従として付合」の状態と言えるだろう。この2つの条文を重ねて読んでみると不動産の定義とは次のような解釈になる。

 「不動産は土地とその定着物であり、定着物には建物や樹木、地面に固定された物置などの工作物、境界を仕切る門塀などのことが該当する。なお、建物内では外しにくい設備や家具などが含まれる」

 このような解釈となるが、いかがであろうか。

 この不動産の定義が分かってくると、売買当事者に様々なアドバイスができるようになる。判断のポイントは定着物、「従として付合」だ。

 たとえば物置だが、定着物なら不動産として売買対象とするが、容易に動かすことができるなら売買対象外となり、売主に「引き渡し時までに撤去処分をしてくださいね」とアドバイスできる。

 また、建物内の設備なども同様。「従として付合」の状態なら買主に「この設備は付いています」と言え、逆に容易に外せるなら「このエアコンは売買対象外です」と現地案内時に説明できるようになる。売買当事者との間で共通認識を持っておくことは、売買仲介では必須だ。不動産の定義も理解しておこう。

【プロフィール】

 はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株) 代表取締役。

 2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動をして現在に至る。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。

 著書には約8万部のロングセラーとなった『動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストで『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。