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円安、資源高(下) クローズアップ 賃貸利益を損なえば黄信号 経済の脆弱性に要注意 主力オフィスと外資に不透明感 金融政策を変更しても円安が続く

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足元の点検と新たな収益の種まきへ
 カネ余りと品不足が相まって不動産価格は上昇曲線を描いてきた。世界の不動産取引額は過去最高を記録する見通しだ。JLLの「投資家心理調査2022」によれば取引額が21年より増えて1780億~1920億ドルとの回答が4割を占めており、それ以上の取引額を想定する回答も約1割となった。日本は投資先としてアジアで最も人気が高い。前号に続き死角を探ってみる。

 ロシア・ウクライナ情勢に伴う資源高に加えて、為替相場は1ドル130円の水域まで円安が進行しており、この円安を受けて日本の不動産は外資にとって買いやすさが増しているとの見方も浮上する。日銀は低金利政策を継続する。資金調達環境は良好に推移し、そこに弱い円の定着が加わる。「既に大きな投資家は仕込み済みだと思われるものの、(コロナや国際情勢を見極めつつ)日本市場への投資タイミングを見計らっている海外投資家は存在するだろう」(国内証券大手)との見方は消えてはいない。

 ただ、「理論的には、円安になると海外の投資家が日本の資産に投資するようになるが、今回の円安は日米の金利差だけでなく、日本経済の資源価格の高騰に対する脆弱性を反映していることも忘れてはならない」。ムーディーズ・アナリティックス・ジャパンのシニアエコノミストであるシュテファン・アングリック氏はそう指摘する。

 日本の経済は脆弱性が高いため、実際に資金流入が加速するかは不透明だとして、資源価格の高騰により名目輸入が増えて貿易赤字を拡大させ、経常収支の縮小や赤字につながり、円安圧力となる。このことは、「つまり日銀の金融政策が変わったとしても円安の状況は大きく変わらない」と見立てている。

 JLLの調査を見ると、投資を強めるセクターとしては賃貸集合住宅に照準を当てている。同社では、過去最低水準の利回りがなお圧縮に向かう可能性は限定的とするが、売り手市場で資産を売却したとしても、そこで得た売却益の再投資先を高値圏で見つけるのも課題だとする。

GW分析を反映へ

 資産インフレと資源高が重くのしかかる中で、不動産各社の事業戦略への見直しに波及する可能性はないか。地政学リスクが高まり社会経済活動も見通しづらい。エネルギー価格の上昇は深刻だ。

 ムーディーズ・ジャパンでは、三井不動産と三菱地所、Jリート3社を格付けしているが、西尾稜平アナリストは「向こう12~18カ月の方向性は投資法人1社を除き、信用力は安定的に推移するとみている。競争力と財務の健全性を重視しているので、収益と負債、資産価値と負債のそれぞれのバランスを格付けで反映する」と話す。投資がかさみ、その収益の回収が予想より下振れると信用力の評価上はネガティブとなる。

 不動産大手は、ホテルや商業施設などがコロナ禍の直撃を受けた。各社とも特定のリスクにさらされる割合は様々だ。大和不動産鑑定の竹内一雅・主席研究員は、「これまで底だったので回復傾向に向かう。人流は戻り基調にある。だが、コロナ前のような訪日客を競うような施策からの脱却が求められる」と警鐘を鳴らす。過去に訪日需要が大きくプラスに働いてきた円安だが、コロナ前とは事業環境が違う。足元は1室当たりの客室単価も厳しい。ゴールデンウイーク(GW)にどう動いたかが今後を占う試金石となりそうだ。その分析を反映できるかがカギとなる。

投資回収に注視

 両横綱の三井と三菱の事業ポートフォリオを見比べると、三菱地所は安定感が高く東京・丸の内の大家として存在感を放ち続けており、オフィスから上がる収益の比率が高く保守的な印象が強い。 一方、三井不動産は、商業施設などを開発してそれを売却する回転型ビジネスの比率が高く事業の多角化も進んでいる。より市況変動の影響を受けやすい事業比率が高いなど投資にアグレッシブで面的な複合開発に強い印象だ。東京ドームの買収はその投資への意欲が高いことを示した。

 両社の主力はオフィス賃貸ビジネスだ。「三井不動産は米国での大規模複合開発ハドソンヤードや東京ミッドタウン八重洲など大型投資が計画通りに収益の柱に育っていくこと。三菱地所は東京駅前常盤橋プロジェクトの本丸であるトーチタワーへの投資の規模感や、どのようにファイナンスするかが今後の注目点だ」と前述の西尾氏は話す。 もっとも、業績が堅調に推移すると同時に将来の新規プロジェクトへの種まきや、収益構造上の観点から含み益を含めて投資を支えるだけのバランスシートになっているかなどもポイントだ。今は攻めか守りかの悩み時。内需型産業の代表格とはいえ、国際情勢の悪化を受けて世界経済の成長が鈍化に向かう中で無傷で済むとは考えづらい。オフィスからの岩盤利益を確保し続けられる前提が崩れれば会社の信用力と投資家の評価に黄信号がともる。(中野淳)

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