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〝NFT〟の活用広がる 集客やファンづくりなどに  

 「Web3.0」の世界では、プラットフォーム大手企業であるGAFAM(グーグル・アマゾン・フェイスブック・アップル・マイクロソフト)に情報が集中していた従来の「中央集権的」な枠組みが変革する。今後は、権限や意思決定が〝分散〟され、多方向に情報伝達ができる。メタバースでの商取引は、ブロックチェーン(分散型台帳技術)が活用されて、暗号資産のほか、デジタル鑑定書とも言われる〝NFT〟(非代替え性トークン)が一翼を担う。

 

SHIBUYA109渋谷店とその周辺の街を創出

 SHIBUYA109エンタテイメント(以下・109、東京都渋谷区)は、「メタバース・NFT事業」に3月から本格参入した。

 業務提携したBACASABLE GLOBAL LIMITED(香港)が世界展開するブロックチェーンを活用したゲームメイキングプラットフォーム「The Sandbox」のメタバース上で、109専用の土地『SHIBUYA109 LAND』を開設した。

 メタバースに『SHIBUYA109渋谷店』を含めた渋谷エリアの街を創出している(イメージ図)。オリジナルのNFTの販売のほか、メタバース上での広告事業などで様々に展開していく。

リアル空間と連携

 仮想空間だからこそ、かなえられる新たな〝顧客体験〟を世界中の来場者に楽しんでもらう。デジタルデータの唯一無二性を証明できる「NFT」は、市場が急成長している。アートやゲームのほか、不動産を含め、様々な分野で広がる可能性がある。109の強みでもある〝リアル〟空間での商業施設や広告事業との連携も見据えて活用する。

 109社長の石川あゆみ氏は、「これまでにリアルな空間で展開してきた、アーティストやキャラクターなどとコラボレーションするノウハウを生かし、様々な〝仕掛け〟を検討している。国内外の多くの人に、メタバースでのSHIBUYA109を楽しんでもらいたい」と話す。

顧客との新たな関係性を  HARTi・東急不・丹青社・ピクシー

 HARTi(東京都千代田区)、東急不動産、丹青社(東京都港区)、ピクシーダストテクノロジーズ(東京都千代田区)は、次世代型商業施設の実験店舗『111(ICHI ICHI ICHI)』(東京・渋谷の東急プラザ渋谷3階)で、NFTを活用した実証実験を4月3日まで行っている。NFTを配布し、オンライン上のコミュニティを構築する。空間のDX化によって〝新たな体験価値〟を創造していく。

 NFTは、ひも付けたデータを唯一無二であるとブロックチェーンで証明できる。商業施設に導入することで、施設側と顧客側の新しい形の関係性を構築し、エンゲージメント(深いつながり)を高められると注目されている。

 今回の実証実験では、特定のNFT保有者のみが入会できるオンライン上の限定コミュニティの仕組みに着目した。展示会を開催するなど、商業施設を起点としたオンライン上で交流の場を構築することで、商業施設への〝リピート〟来館の仕組みを検証していく。空間づくりのノウハウと最新デジタルデザイン技術なども掛け合わせる。

近未来都市を制作  コインチェックなど

 コインチェック(東京都渋谷区)と、バーチャルリアルティプラットフォーム『Decentraland』は、コインチェックが同プラットフォーム上のメタバース内に保有している土地区画「LAND」を活用して、35年の近未来都市を想定した『Oasis KYOTO』(京都)を制作する都市開発プロジェクトに3月16日に着手した。22年中に一般公開する。

 神社仏閣などの日本の古都を連想させる街並みを形成。メタバースとNFTを融合したコミュニティ拠点に位置付ける。様々なイベント施設を配置し、アーティスト、ファン、企業が交流できる場にしていく。制作を始めた『Oasis TOKYO』(東京)に続く取り組みとなる。