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コンバージョンフレキシブルオフィス 築古・歴史的建築などで事例増 地域活性化策として存在感

 コロナ禍の長期化や働き方の多様化を背景に、地方都市においてもシェアオフィスやコワーキングスペースなどのフレキシブルオフィスが増加している。とりわけ地方都市においては、築100年以上の蔵や〝レトロ感〟のある木造建築など、築古の建物をコンバージョンしてフレキシブルオフィスへと再生するケースが目立っている。

 1月、コワーキングスペース事業を手掛けるいいオフィス(東京都港区、龍崎宏社長)が埼玉県比企郡小川町で、築100年の石蔵をリノベーションした新施設「いいオフィス小川町 by NESTo」を開業したと発表。有機農業が盛んなことで知られる同町の特色を生かし、現地で活動するNPO法人とも提携しながら、近隣のリモートワーカーだけでなく都市部のワーケーション需要なども取り込む狙いの施設だ。

 また同じく1月には、オフィス関連の設計や機器・什器などを扱う渡敬(秋田県横手市、渡部尚男社長)が同市で「コワーキングスペースかま蔵」を開業。120年以上前に建てられた旧家の内蔵を改装した施設で、地域住民のワークスペースとしてだけでなく、学生の自習や起業家のスタートオフィス、来街したワーカーの利用などを見込む。世代・居住地を超えた交流を促し、新たなコミュニティづくりと共に、同市のブランド発信やAターン人口の増加を目指す。

 いずれも「蔵」をコンバージョンした施設だが、地域資源としての建築物を活用して都市部の施設と差別化し、地域の活性化を図っている。

 同様に、ワークスペースコンサルティング事業の文祥堂(東京都中央区、佐藤義則社長)が企画し、神奈川県小田原市で5月に開業・運営予定のワーケーション施設は、同市の旧片浦支所として使われていた築約70年の木造建築を改装するもの。近隣からのコワーキング・レンタルオフィス利用に加え、地域の特徴を生かした付加価値商品・サービスの創出によるワーケーション需要に重きを置く。

 山口県宇部市の不動産事業者である180度(相澤洋佑社長)が、1月に開業した「ナニココX」は、倉庫をコンバージョンして仕上げたコワーキングスペース。同市の「まちなかオフィス立地促進補助制度」を活用した事業で、地域経済の活性化に向け、都市部の企業による地方への拠点移設需要も想定する。

 コロナ禍以前に倉庫や歴史的建造物を再活用する際には、観光分野の市況が活発だったこともありカフェや物販店、宿泊施設などの用途が多く見られた。しかし直近では、既存建築の有効活用の手段として、また地域活性化のためのアプローチとして、フレキシブルオフィスの存在感が高まっている様子が各地の事例からうかがえる。