マンション・開発・経営

トップが語る(下) 松尾野村不動産社長 地域交流支援するまちづくり 東南アジア3カ国を重点的に

 野村不動産は、成長が見込まれる物流施設や、新型コロナの影響で厳しい環境が続く商業施設、宿泊施設の今後の展開をどう考えるのか。また、同社独自のまちづくり「BE UNITED構想」の進展や海外展開などについて、野村不動産の松尾大作社長に聞いた。(聞き手=桑島良紀 写真=佐藤順真)

 ――物流施設や商業施設の展開について。

 「物流施設は投資家向けの資産運用部門が早くから着目して、事業化していったという歴史があり、開発型で16物件手掛けている。(用地取得)競争が激しいが、単に入札で購入するだけでなく、区画整理事業や地方展開もやっている。そこに当社らしいサービスを入れることで、成長が見込める事業だと考えている。

 一方、ホテルと商業施設に関しては、(新型コロナで)小休止の状態になっているが、特に商業施設は、GEMSやSOCOLAを着実にやっている。リニューアルした『SOCOLA南行徳』が満床稼働であったり、亀戸(4月開業予定の『KAMEIDO CLOCK』)もできてくる。再開発の中での商業施設整備もある。そこをかっちりやっていく。ホテルについてはこれからで、3施設目を京都で開業する。ループトップバーや寺院と組んだ瞑想室など面白い取り組みをしている。芝浦の再開発でも高級ホテルを招致していく」

 ――「BE UNITED構想」に基づくまちづくりは?

 「船橋の『ふなばし森のシティ』(のまちづくり)が海外からも非常に評価され、当社らしく将来的にも重要な取り組みということで、日吉(プラウドシティ日吉)でも始めた。来年3月に完全竣工を迎えるが、この2年間は新型コロナで地域交流がままならず大変苦労したと聞いている。(BE UNITED構想に基づくまちづくりは)住民の人たちがまちをよくしていく、まちを開くというところも斬新で、当社らしい取り組みだと思っている。(複合開発である)亀戸でも地域交流を行っていく。住民の人たちによる地域交流をサポートするのは、当社のエリアマネジメントの大切なところで、これからも続けていく」

 ――海外事業の展開について。

 「アジアの成長を取り込んでいくことが一つのキーワードとなっている。中国に関しては、一定の枠の中で現地の信頼できるパートナーと住宅分譲事業をやっていく。

 東南アジアは、フィリピン、ベトナム、タイの3カ国に重点投資をしていく。フィリピンは、現地財閥系のグループと手を組んでいる。ベトナムは、エリアディベロッパーとして認知度が高いフーミーフンや、(最大コングロマリットの)ビングループとパートナーシップを結んでいる。

 どこと組むかは非常に大事であるし、今のところは良いパートナーシップが組めている。タイは、成長企業であるオリジンと組んでいるが、当社からノウハウを提供することで信頼関係が生まれている。現地に投資だけしている会社と比べて、現地での当社への情報提供が着実に増えている。社長就任以前は、海外事業に関わっていたので肌感覚でうまくいくと感じている。まずは3カ国を固め、3カ国以外については、3年ごとに見直す中期経営計画で考えていく」

 ――最後に、アフターコロナも必要とされる企業になるためには?

 「繰り返しにはなるが、これから当社ではダイナミックな事業が続くが、基本は引き続き、現場=顧客に寄り添い、変化するニーズに向き合うことだ。当社の大・中・小を織り交ぜた事業展開は、多様性を求める時代において、(個々に)カスタマイズされる社会に変化していくことと合っている。

 顧客ニーズに合わせて間取りを変えることができるオーダーメイドは、当社の代名詞だが、今の時代の要請にもかなっている。野村不動産の強みは、そこにあるということを強く伝えていきたい」