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不動産企業がDXへの取り組み具体化 プラットフォーム開発や物件管理効率化へ ヒューリックや野村不HDなど

 不動産企業によるDXへの取り組みが具体化してきた。ヒューリックなど4社は、年内にもプラットフォーム開発とフレキシブルオフィス(今週のことば)への実装を開始。野村不動産ホールディングスは、不動産管理プラットフォームを提供する企業へ出資し、DX化を加速する。他の不動産企業が提供するオフィス等との差別化や新サービスの提供、テナントの利便性向上などを図る。

フレキシブルオフィスへ実装

 ヒューリック、ABEJA、伊藤忠商事、セコムの4社は、オフィスビルのテナント企業やワーカーの利便性・生産性向上、ビルオーナーの営業・管理業務効率化等を実現するオフィスDXプラットフォームの開発および同プラットフォームを実装した「新しいワークプレイス」を展開する。

 ヒューリックは8月から、プラットフォーム上に実装するアプリケーションや新たなワークプレイスを開発。11月に開業し、ヒューリックが開発する中規模フレキシブルオフィス「Bizflex麻布十番 by HULIC」で、同プラットフォームを導入し、第1弾アプリケーションの実用を開始する。アプリケーションの拡充に向けた実証実験を同オフィスに設置する「(仮称)Office Tech Lab」で実施し、22年中をめどに追加アプリケーションとワークプレイスをリリースする予定だ。

 オフィスビルは、働き方の変化に合わせたバリューアップを行うことで競合物件との差別化を図る必要に迫られており、それが今回の取り組みの背景となっている。テナント企業やオフィスワーカー、ビルオーナーそれぞれのニーズや課題に応えるため、オフィスの設備やそこから取得できるデータとデジタルツールを連携させるオフィスDXプラットフォームの開発に着手。また、同プラットフォームを活用し、新しい働き方に対応したワークプレイスの開発・展開を推進する。

不動産管理を効率化

 野村不動産ホールディングスは、コーポレートベンチャーキャピタルファンド(CVC)「NREGイノベーション1号投資事業有限責任組合」を通して、AI搭載の不動産管理プラットフォーム「管理ロイド」を開発・運営するTHIRD(東京都新宿区、井上惇社長)の新株予約権付社債の引き受けを行い、業務提携契約を締結した。

 同社はこれまでCVCを通じて7社(THIRD含む)への出資を実施。THIRDは、不動産管理に必要な一連の業務を1つのシステム上で完結させるSaaS型ソフトウェア「管理ロイド」を展開。不動産管理業務の抜本的な効率化・省人化・ペーパーレス化や現場情報の遠隔確認などのニーズの高まりも追い風となっている。

 今回の業務資本提携に先駆け、野村不動産パートナーズが管理している約30棟のビルやマンション等の物件で「管理ロイド」のサービス導入を検証し、6月から本格導入を開始して、順次導入を進めている。今後は、社内のDX部門と連携し、管理品質向上と業務効率化を実現する機能強化、AI開発における言語処理の開発協力などの協業を予定している。