総合

彼方の空 住宅評論家 本多信博 ◇8 SDGsの実践者とは? 第3回「不動産女性塾オンラインサロン」 朝日エル会長 岡山慶子氏が講演

 英語の頭文字を取ったアルファベット語をメディアで頻繁に目にするようになった。英語によるグローバルな語感と「略語」を使いこなす専門家的な心地よさが受けている理由だろう。ただ、気を付けたいのは、略す前の元のフレーズが分かった瞬間に、その意味を理解したような気分に陥りやすいことである。

 例えば、SDGs(SustainableDevelopmentGoals)。 持続可能な開発目標という意味だが、では持続できなくなるとはどういうことか、そうなる確率はどれぐらいか、そうしないためには誰が何をすればいいのかが分かっていなければ、SDGsを理解したとは言えないだろう。

 7月13日、不動産女性塾(北澤艶子塾長)の第3回オンラインサロンでSDGsをテーマに講演した朝日エル会長の岡山慶子氏は、持続可能な社会にするためには、誰が何をすればいいのかを熱く語った。

 朝日エルは岡山会長が86年に設立した会社で、女性が結婚や妊娠をしても働き続けることができる社会、普通の生活者が暮らしやすい街をつくるという目標を掲げてスタートした。

 「人間を大切にすることしかビジネスにはならない」という言葉に触発されたという岡山会長の講演は異色だった。普通、SDGsやESG関連の講演は、経済成長と環境問題、企業の社会的責任(CSR)と機関投資家による社会的責任投資(SRI)など固い話になりやすいが、岡山会長はなんと「持続可能な社会は向こう三軒両隣で実現できる」という。 

 そこには、会長のアメリカでの体験が関係している。2000年当時、ミシガン州ではサスティナブルな街づくりが実践されていたが、そこでは子供を交通事故から守る、犯罪を起こさせない、高齢者が美しく見える街にする、エネルギーを無駄にしないなど身近なテーマが掲げられていた。会長は、そうした誰もが当事者意識を持てる身近な課題から取り組むことが持続可能なプロジェクトにつながっていくことを学んだという。

身近な課題から

 そして、持続可能な社会を担うのは(1)人を愛する(2)寛容である(3)小手先ではなく元から正す(4)制度に勝る文化をつくる(5)仕えるリーダーシップを発揮(6)議論を尽くすなどの資質を備えた人たちだということも。

 この辺りから講演が佳境に向かう。自著『女たちのすごいマーケティング・13の法則』(中経出版)を引いてズバリ、「女性こそが持続可能な社会の担い手になる」と指摘。その理由を次のように語った。

 「女性には、誰をも幸せにしたい、〝好き〟を大切にする、ギアチェンジができる、感動のおすそ分けをする、ロマンを共有する、コミュニティの中で生きることができるなどの特質があるから」だと。そして、こうも語った

 「日本ではこれまでずっと、女性が弱い立場に置かれてきた。それが、これからの時代にとって大事な要素を育ててきたのではないか。私のこうした思いを集約したのが不動産女性塾だ。だから、SDGsの実践者とは、地域のことがよく分かっていて、地域に貢献することを仕事にしている不動産女性塾の人たちである」と。

   ◇     ◇

 この日のオンラインサロンには、北海道から沖縄まで全国から75名が参加。回を重ねるごとに参加者が増えている。その点について北澤塾長は「女性塾がこうしてネットワークの輪を広げることができているのは、毎回素晴らしい講師の先生に来ていただいているおかげです」と感謝の意を表した。

 岡山会長は、最後にこうも語った。「外来語に惑わされないことが重要。日本には日本流のサスティナビリティがある。日本人が昔から大切にしてきたものこそサスティナビリティを具現化するものであることに気付き、それを日本から世界に発信していくことが大事だと思う」