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公共トイレを刷新 隈研吾氏デザイン 日本財団が鍋島松濤公園に 自然を感じるトータルな体験を

 誰もが快適に使用できる公共トイレを設置するプロジェクト「THE TOKYO TOILET」を東京都渋谷区で実施している日本財団(笹川陽平会長)。6月24日には鍋島松濤公園の公共トイレが竣工し、一般利用が開始された。利用開始当日にはデザインを手掛けた建築家の隈研吾氏が来場した。トイレのタイトルは「森のコミチ」。周囲の自然環境に溶け込むデザインが印象的だ。

 同プロジェクトは渋谷区の17カ所に16人のクリエイターがデザインした公共トイレを設置するというもの。暗い、汚い、臭い、怖いといった公共トイレのイメージを払しょくするのが狙いだ。鍋島松濤公園で9カ所目の設置となる。日本財団の笹川順平常務理事は「このプロジェクトは建築までが半分、使い始めてからがもう半分。きれいにトイレを使い続けられる国民性を世界中にアピールしていきたい」と抱負を述べた。

 利用開始当日には、デザインを手掛けた隈研吾氏が完成したトイレを視察した。様々な候補地がある中で同公園を選んだ理由について、隈氏は「緑の深さに改めて驚き、ここに木で森に溶けるようなものを造れば、今までの公衆トイレのイメージを一新できる。建築物と同じように外のスペースも大事になる。外を歩いて、自然を感じて、そのトータルな体験が建築になる」と説明した。

「森のコミチ」

 完成したトイレのタイトルは「森のコミチ」。緑豊かな公園に集落のようなトイレの村が設置されるというコンセプトだ。トイレは一般用、多目的、幼児用、手すり付き小便器、小便器など5つを配置し、5つの小屋が小道で結ばれるイメージだ。階段が設けられているのはトイレ空間としては珍しいが、山道を歩く感覚を提供するのが狙いだ。

 外壁にこだわったのも特徴だ。高級なブランド材である吉野杉のルーバーを微妙に角度を変えながら、周囲の環境に溶け込むように配置している。夜は照明により、優しい印象になるようにライトアップされる。

 隈氏は「一番日常に近いトイレ、地域に近い公衆トイレに今まではデザインの力が関与していなかった。このプロジェクトはデザインの力が日常に入り込んでくるという意味で画期的なもの」と述べた。同プロジェクトでは22年3月までに残り8カ所でデザインされた公共トイレを設置していく。