政策

21年版「土地白書」公表 ハザード情報の意識高まる 災害対応等で土地活用に変化も

 政府は6月15日、21年版土地白書を閣議決定した。土地基本法第11条第1項および第2項の規定に基づき、毎年国会に報告している。20年度の土地に関する動向や21年度に講じようとする基本的な施策等を3部構成でまとめた。

 白書によると、不動産取引時に「ハザードマップ等の災害に関する情報」(上図参照)を参考にしている人が約4割(41.5%)に上ることが分かった。これは「周辺の公共施設等の立地状況・学区情報」(62.1%)に次ぐ多さで、「住宅の維持保全に関する情報」(31.0%)を上回る。更にこのハザードマップ等を参考にした回答者のうち、9割が近年の自然災害の発生状況が影響していると回答しており、激甚化・頻発化する災害が国民意識に影響している点がうかがえた。

 第1部第1章では20年度の不動産市場動向や土地問題に関する国民の意識調査結果等を報告。21年地価公示ではコロナ禍の影響で、全国および三大都市圏において全用途、住宅地、商業地のいずれもが下落に転じた点を示した。

 第1部第2章では、国民の生命・生活を守るための土地利用に着目。「新型コロナウイルス感染症による不動産市場等への影響と対応」「防災・減災に対応した土地等の活用」「東日本大震災の影響と復旧・復興の取り組み」の3節に分類した。新型コロナ対応では、感染拡大により影響を受ける事業者等への支援制度として、負担調査の仕組み等の継続、税額が増加する土地について前年度の税額に据え置く措置などをまとめた。更に土地利用や働く場所の変化に着目し、道路占用許可基準を緩和して店舗の軒先に販売スペースを設置した例や不動産テックを活用した取り組みも紹介している。

 防災・減災対応では、国や民間等の取り組みを紹介。具体的には宅建業法施行規則の一部改正による不動産取引時のハザードマップにおける所在地等の情報提供や、特定都市河川浸水被害対策法等の改正による流域治水への転換の推進などだ。第3節では発生から10年が経過した東日本大震災の影響と復旧・復興の取り組みをまとめた。被災地における土地利用として、被災者との協働によるコミュニティガーデン(宮城県石巻市)や復興のための公民連携のエリアマネジメント(岩手県大船渡市)を例示。このほか、農業再生のため、北米原産のピーカンナッツの産地化に向けた産業振興拠点の整備を進める岩手県陸前高田市の取り組みなどを紹介している。