この1年余り、不動産業界も新型コロナウイルス感染症の影響に翻弄される中、成長を鈍らせることなく設立以来18期連続の増収増益を果たしたプロパティエージェント。20年度の振り返りと来期の展望、将来のビジョンを中西聖(せい)社長に聞いた。(聞き手・佐藤順真)
――20年度決算について。
「コロナ禍という大きなマイナス要素の中でも、増収増益を維持できたことはやはり大きい。とはいえ、金融機関の状況や方針転換への懸念こそあったが、我々自身の事業についての不安はなかった。コロナ禍以前からDXに力を入れてきたことが実を結んだと考えている」
――具体的には。
「いくつか例を挙げれば、まずオンライン商談やIT重説といった業務のデジタル化がある。設備面はもちろん、マインドやノウハウの面でも既に体制が整っていたので、問題なく事業に取り組めた。また、以前から展開しているオウンドメディアやwebマーケティングによる集客力が、コロナ禍で更に高まったという一面もある」
「個別の事業で言えば、まず20年に立ち上げた投資用中古不動産マッチング事業が好調な滑り出しを見せた。そして20年に本格始動した子会社でシステム開発を担うDXYZ(ディクシーズ)と、同社の開発した顔認証サービス『FreeiD(フリード)』の存在が大きい。同サービスを導入した開発物件も高評価で、引き続き差別化に役立てていく」
――それらの事業やDXのアドバンテージは、21年度事業においてもポイントとなるか。
「なるだろう。業務のDX化は前提として、オンラインによる集客力を複数事業に生かせればシナジーの強化につながる。顧客への提案については、より効果を高めるため常に課題感を持ってアップデートしている」
「もちろん、土台としての新築投資用マンション事業をはじめ、居住用マンションや鉄骨アパートの開発事業をしっかり伸ばし、中古不動産マッチング事業も育てていく。そして、『フリード』の更なる展開には特に力を入れていきたい」
「他方、金融機関の動向は懸念材料。市場への資金供給が続いているからこそ、後に響く可能性が高まるため、今期は前期以上に注視すべきポイントと捉えている」
――将来的な方針も含め、『フリード』のビジョンを。
「このサービスは〝マンションを進化させる仕組み〟。1つの顔認証IDを多様なシーンで利用できるプラットフォームで、飲食店や配送、アミューズメント施設など活用の幅は広く、それらとの連携はマンションの価値を向上させる。更に言えば、ディベロッパー発の〝世界の進化につながる技術〟だとも思っている。高い技術を持つ国内大手企業と協働し、国際社会における日本のプレゼンス向上にも貢献できれば」