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主要不動産企業 21年3月期決算 減益もオフィス、住宅の回復顕著

 主要不動産企業の21年3月期決算は、新型コロナウイルスの影響で期中に2度の緊急事態宣言の影響を受け、減収減益決算が目立つ中、回復の兆しも見えた。期中を通じてホテルの稼働率低迷や商業施設の休止や営業時間短縮が業績悪化の主な要因となった。一方、オフィス事業と分譲マンションは好調を維持し、業績を支えた。21年3月期に入ってからは3度目の緊急事態宣言が出ているが、新型コロナの影響が軽減されていくと見ており、おおむね増収増益の予想となっている。

今期は増収増益、過去最高更新も

 大手5社のうち、三井不動産を除く4社の売上高が減少。住宅事業は堅調だったが、上半期に営業休止期間があった影響で計上戸数の減少や、収益全体への貢献度が少なかった企業も見られた。純利益については、住友不動産を除き減益となった。

 オフィスビル賃料収入は堅調。テナントの賃料増額改定と、新規ビルの稼働により収益が拡大した。新規ビルについては、東急不動産ホールディングスが昨年9月に稼働した「東京ポートシティ竹芝」(東京都港区)は、ソフトバンクグループが本社機能を移転し、満床稼働となり、底堅さがうかがえる。また、既存オフィスについても空室率は上昇傾向にあるものの、2~3%台と低い水準を保っている。

 分譲マンションに関しては、7月以降にマンション販売が回復し、今年1月の2度目の緊急事態宣言時はウェブ接客が浸透し、モデルルームでは完全予約制など感染対策の徹底が浸透したため、大きな影響はなかった。これまでの都心のタワーマンションに加え、在宅勤務の普及でより広い住まいを求める動きが顕著となり、「郊外物件が想定以上に堅調だった」(三菱地所)。

 一方、新型コロナで大きなダメージを受けたのは、商業施設とホテルだ。期中2度の緊急事態宣言により、人の移動が制限されたことでホテルの稼働率が低下。商業施設も営業時間の制限が長期化して全体の収益圧迫の要因となった。住友不動産は、羽田空港に直結したホテルなどの複合開発プロジェクト「羽田エアポートガーデン」の開業を延期した。

ワクチン接種に期待も

 22年3月期については、回復を予想する企業が目立ち、過去最高の更新を見込む企業も目立つ。オフィスと住宅は、堅調な地合いを引き継ぐと見ている。期中の大型開発物件の開業は少ないが、今夏開業予定の「常盤橋タワー」(東京都千代田区)は直近で約9割の入居率となっており、新設オフィスへのニーズは高い。業績を左右するのは、商業施設やホテル事業だ。新型コロナの影響は予想が難しいが、「昨年後半程度の影響は織り込んでいる」(野村不動産ホールディングス)としている。また、「ワクチンの接種が進み、緩やかに回復するのではないか」(三菱地所)との期待もある。

影響にばらつきも

 事業セグメントにより明暗が分かれたのは、大手企業に限らない。特に宿泊関連事業では総じて大幅な減収減益(コスモスイニシアなど)が見られ、全体の業績にも影を落としている。他方、比較的底堅かった分譲マンションやオフィス関連事業においても、コロナ禍の影響にはばらつきが見られる。

 新築・中古共にマンション事業が好調で全体をけん引した企業(明和地所など)があった半面、営業自粛等の影響が響き実績が落ち込んだ企業も散見される。またオフィス・ビル事業についても、順調に業績を伸ばした企業がある一方で、苦戦が続いている企業は多い。前例のない対応を迫られるコロナ禍において、その影響はまだら模様のように広がっている様子がうかがえた。