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ニュースが分かる! Q&A コロナ禍で〝初めて〟の地価公示 移住・二拠点に関心高まる

 記者 先日、21年地価公示が発表されました。毎年1月1日時点の1平方メートル当たりの正常な価格を判定し、公示するもので、一般の土地の取引価格の指標となっています。

 デスク 今回は21年1月1日時点ということで、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた初めての地価公示として注目を集めたね。

 記者 概要は「住宅新報」(3月30日号)で既報していますが、全国の全用途平均(0.5%下落)が15年以来、6年ぶりに下落に転じました。用途別では、全国の住宅地(0.4%下落)は16年以来5年ぶりに、商業地(0.8%下落)は14年以来7年ぶりに下落に転じました。

 デスク 三大都市圏平均および地方圏平均を見ても、全用途平均・住宅地・商業地はいずれも下落に転じている。工業地は上昇が連続しているものの、やはり上昇率が縮小した。コロナ禍の影響によって全体的に弱含みとなった。

 記者 更にその地価動向の変化の程度は用途や地域によって異なっています。大阪圏の商業地では1.8%下落(前年比マイナス8.7ポイント)と大きな変化が見られました。前年に大幅上昇となった道頓堀や心斎橋では、国内外の観光客が減少した影響で二桁マイナスに反転しています。

 デスク 東京圏の住宅地を見れば、東京23区では港区と目黒区の2区が上昇している。どちらも高級住宅地を中心に、環境・利便性の良好な地点が多いことが要因か。隣県では都心近接などを背景に上昇が継続した地域も見られるが、その範囲は前年よりも狭まっているようだ。

 記者 今回、変動率プラスの都道府県は住宅地が8(前年比12減)、商業地は7(同17減)と前年より減少しました。そんな中、変動率プラスの都道府県の特徴について、国交省地価公示室では、(1)上昇を継続した地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)やその周辺エリアであること、(2)その都市内で着実な需要がある一方で新規供給がないこと、(3)商業地においても、住宅需要があるエリアでは相乗効果や競合から上昇につながりやすい点などを指摘しました。

 デスク 地価上昇率の高い地点の動向はどうか。

 記者 前年同様、住宅地、商業地共に1位は北海道の倶知安町です。コロナ禍による取引件数の減少などで上昇率は縮小したものの、住宅地が25.0%上昇、商業地が21.0%上昇と高い上昇率が継続しています。倶知安町周辺の別荘地エリアではコロナ収束後を見据えた開発計画が進行。駅前エリアの商業地では、北海道新幹線の延伸等に伴う利便性向上への期待感も後押ししているようです。

 デスク インバウンド需要の減退や開発のペースダウンがあっても、一部の観光地では長期視点から観光投資や国内事業者の需要が地価上昇を後押ししている地点もある。

 記者 このほか、21年地価公示では「インフラ整備」や「首都圏に近い別荘地という地域性」が地価上昇への影響として確認されています。前者では北海道北広島市がその一例。札幌市に隣接する同市では新球場を核としたボールパークの開業が予定されています。雇用増と定住人口増が見込まれる中、宅地の供給が限定的なことや相対的な割安感から札幌市の住宅需要が波及しているとのことです。また、北大阪地域の大阪府箕面市では、北大阪急行延伸で新設される新駅の予定地周辺で住宅地、商業地共に地価が上昇しています。

 デスク 「首都圏に近い別荘地」は、コロナ禍で話題になった在宅ワークや二拠点居住の萌芽とも見られるが。

 記者 こちらも、静岡県熱海市や長野県軽井沢町の一部地域では地価上昇が確認されています。特に代表的なリゾート地の軽井沢では、これまで首都圏の高所得層を中心とする別荘地への需要で地価は上昇していました。ただ、コロナ禍では、「セカンドハウス、移住等を目的とした需要も出てきた。多拠点居住や移住の選択肢となっている」(地価公示室)といいます。

 デスク 移住・二拠点居住に関する関心度については先日、リクルートが東京都在住の20~60代を対象に調査を実施。「関心がある」という回答が約36%、「コロナ禍でより関心が高まった」が52%と半数を超える結果となったようだ。コロナ禍で変化する人々の価値観についても引き続き注目していこう。