総合

集合住宅のコロナ対策 換気の仕組み再確認を 空気の〝通り道〟をつくる

 昨年から続くコロナ禍で、建物の換気の仕組みやエアコンの機能について再確認した人も多いのではないだろうか。換気の意味や必要性、換気方法など、厚生労働省や関連団体などが「正しい情報」を発信したことで、消費者も認知することができた。一方、住宅、特にマンションやアパートなどの集合住宅では窓・ドアの開放による換気が難しい場合もあるため、さまざまな設備を利用しながら〝空気の通り道〟をつくることが重要だ。感染対策を通じて適切な室内空気環境を実現し、住まいの快適性につなげたい。(ライター 玉城麻子)

    ◇   ◇

コロナ対策としての換気

 一般的なエアコンには換気機能がないため、換気をせずにエアコンのみを運転すると感染リスクが高まってしまう。そのため、適度な換気を行うことが重要となる。

 空気調和・衛生工学会の新型コロナウイルス対策特別委員会が、20年9月に公表した「新型コロナウイルス感染対策としての空調設備を中心とした設備の運用について(改訂二版)」によると、住宅における空調設備の運用方法として、03年7月以降に建てられた住宅に原則義務付けられている24時間換気システムの常時運転をすれば、「適切な換気が確保されているといえる」としている。

 しかし、浴室やトイレの換気扇と兼用となっている場合や、第三種換気(自然給気+機械による強制排気)で給気口を閉じていたり、メンテナンス不良でフィルターが目詰まりしていたりして、適切な機能が発揮できていない状態が多いため「運転方法を確認し、メンテナンスして運転させるとよい」としている。24時間換気システムがない住宅の場合は、トイレや浴室の換気扇を連続運転し、居室側の窓を少し開けておくか、自然換気の場合は風上側とその反対側の窓を5~10センチ程度開けて、〝空気の通り道〟をつくることがポイント。入口と出口を確保して空気を入れ替えることで、ウイルス濃度を低減化させることができる。

 基本的にウイルス濃度低減化には換気が有効だが、空気清浄機を使うことも1つの手段。HEPA(高性能空気)フィルター搭載のろ過式タイプで、十分な風量(1分当たり5m3程度以上)が確保できる機種であれば、「あくまでも補助設備として有効」(空衛学会)とはいえ、感染対策になるとされている。

住宅メーカーも空気質訴求

 シックハウス症候群に加え花粉症などへの対応として、以前よりハウスメーカーやマンションディベロッパーも空気質対策を取り入れているが、コロナ禍でより明確に訴求し始めている。タカラレーベンは空気清浄機能付きエアコンを標準搭載し、抗菌・抗ウイルス建材を使用する分譲マンションを提案。積水ハウスや三菱地所ホーム、大和ハウス工業などでは、戸建て住宅で建材や換気システムを組み合わせ、換気を意識した空気質のコントロールを図る提案を行っている。

 コロナ禍の長期化で、消費者も収束よりも共生を意識するようになってきていることから、住宅における換気・空気質へのニーズは、今後定番化していくと予想される。

見えないからこそ意識

 感染対策として換気が重要であるとの理解は進んだが、日常的な暮らしにおいても重要度は変わらない。換気扇を動かす際には窓(または通気口)を開けないと換気にはならず、室内空気量のバランスがくずれることで、新たに臭気の問題も発生する可能性がある。キッチンや洗濯パンの排水口には、排水管から臭気が上がってこないように封水機能があるが、換気扇を回すことで封水が切れてしまい、臭気が室内に逆流することが多い。特にレンジフードは排気能力が大きいため、ドアが開きにくくなったりする可能性もあるという。

 最近の住宅、特にマンションなどは高気密性、高性能化しているが、適正に機能させるには正しい利用とメンテナンスが欠かせず、それが結果として効果的な感染対策にもなる。特に空気質は目に見えず、まさに〝空気のような存在〟。定期的に各種設備の点検・メンテナンスを行い、自ら快適な室内空気環境を作り出す意識付けが必要だ。