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社説 回復基調にある住宅・不動産企業 想定外に備え、創意工夫を

 期中を通じて新型コロナの影響を受けた住宅・不動産企業の21年3月期第3四半期までの業績が出そろったが、総じて回復基調にあると言える。住宅は結論から言うと、後述する根強い需要が確認できた。戸建て住宅は注文住宅で秋以降に受注の回復傾向が見られ、分譲戸建て住宅も郊外需要が顕在化した。世界的な金融緩和を背景に米国や中国を中心とした海外住宅事業をうまく取り込めた企業の堅調さが目立った。マンションも、モデルルームを休止した期間があったことを感じさせない業績を上げた。オフィスについては大量供給があり、空室率の上昇が指摘される中でも、物件売却益の増加や、既存テナントが賃料増額改定を受け入れたことによって不動産企業の業績が支えられた。

 一方、商業施設や宿泊施設は厳しい状況が続き、各社の業績のマイナス要因となっている。商業施設は集客をかけることができず、営業が制限される中で賃料への配慮をせざるを得ない状況が続く。宿泊施設は、GoToキャンペーンによる稼働率上昇といった下支え効果が確認でき、各社の業績落ち込みの歯止めにもなった。ただ、GoToキャンペーンの休止や1月の緊急事態宣言により、21年3月期中に苦境から脱するのは難しそうだ。商業施設や宿泊施設は、新型コロナの影響を強く受けた事業分野で、先行き不透明感が最も強いと言える。商業施設や宿泊施設において新型コロナの影響が落ち着くのは、ワクチン接種が広がることなどを考慮して、今年末まではかかるとの見通しを示す企業もある。

 商業施設と宿泊施設の苦境が続く中、住宅とオフィスについては、今年も引き続き堅調との見通しだ。その根拠となっているのは、政策支援と市場環境だろう。昨年末に政府が方針を示した住宅ローン減税の延長・拡充とグリーン住宅ポイント制度といった取得支援策が消費者の期待を集めている。政府与党には、内需を立て直すけん引役として、住宅に期待する声が上がっている。また、市場環境としては、世界的な低金利や株高による資産効果が住宅取得を後押しする。オフィスについては、空室率の上昇という懸念がある一方、空室へのテナントの引き合いがあることに加え、23年までは大量供給がなく、当面、オフィス市況が大きく崩れる恐れはなさそうだ。

 とは言え、新型コロナのような想定外の事態は今後も起こりうる。今回は好調だった商業施設や宿泊施設でインバウンドの消失という想定外があった。今後、主力の住宅やオフィスで同じように想定外の事態が起きない保証はない。苦境の商業施設や宿泊施設は、移動店舗や働く場の提供、ワーケーションなど新たな創意工夫で乗り切ろうとしている。想定外の事態に対応するには、常に創意工夫を続け、新たなニーズを獲得していくしかない。