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価値生む〝場の多様性〟 リクルート 職と住の今後を考察

 コロナ禍でテレワークが拡大し、会社の場所に縛られない働き方、住まい方の選択が進んでいる。リクルートは12月2日、「Afterコロナの『働く』と『住む』の関係性」をテーマにオンラインセミナー「コレカラ会議」を開催し、コロナ後の変化と未来に向けた「職×住」の新たな潮流を予測した。

 「コレカラ会議」は、リクルートグループが例年12月に実施するトレンド予測発表会が進化した新しい情報発信の形。第3回の今回は、住まい領域からリクルート住まいカンパニーSUUMO編集長の池本洋一氏、人材領域からリクルートキャリアHR統括編集長の藤井薫氏が登壇し、「働く」と「住む」の関係性について展望した。

 藤井氏は、コロナ禍において首都圏を中心にテレワークが急激に普及したことと、自由にテレワークができるようになった人の過半数がポジティブに受け止めていることを指摘した。また、池本氏は住まいの意識・実態調査から、今後もテレワークが続く場合、賃貸在住者の3割、持ち家在住者の2割が住み替え意向であることを指摘。二拠点居住をするデュアルライフ意向者がコロナ禍で27.4%(20年7月調査)となり、18年11月調査からほぼ倍増したこと、「スーモ」物件ページのユーザー閲覧数からも都心100キロ圏内の郊外への関心が高まっていることなどを紹介し、「テレワークの加速が起点となり、住む場所・働く場所の選択肢が広がり、時間の使い方の自由裁量度が増した」と分析した。

 同社では、従来の会社を起点にした働き方改革から、コロナ禍において生活者自らが生き方そのものをデザインし直す動きを「クラシゴト改革」と定義。テレワークやフレックス制、副業など多様な働き方を背景に、ワーケーションによって暮らしと仕事を整える単身者や、住まいの定額制サービスを生かした多拠点生活で夢のフォトグラファーの副業を実現する夫妻など、実践者の事例を紹介した。

 また、藤井氏はクラシゴト改革を支援する企業事例として、JTBの「ふるさとワーク制度」導入やヤフーの「どこでもオフィス」の無制限化などを挙げ、「先進的な企業は、働く人が自らの暮らしや生き方をデザインできる多様な選択肢を持つことが人材の求心力につながると共に、ユーザー体験やオンライン体験の中に価値の創出の場があると受け止めている」と説明した。

 池本氏は、クラシゴト改革が不動産価値に与える変化について、足元の不動産市況では東京Aクラスのオフィスの空室率が夏以降上昇してきたこと、郊外への人の動きを挙げた上で、「今まで右肩上がりの東京の価格の伸び率は弱まるものの、下降に転じることはないだろう。その理由は、20年来の再開発によって住む場所としての魅力度も高めてきており、実需的な自力があるため」と説明。一方で、郊外では二極化が進むとし、「大宮や立川、町田など郊外の中核都市ではサテライトオフィスの開設など、自宅以外の働く場所が整備されている。湘南など特徴的なエリアも街の魅力度を高めるだろう」と予測。暮らす街の魅力度と情報発信力が不動産価値へ影響を与えると指摘した。