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ニュースが分かる! Q&A コロナ禍の賃貸入居者ニーズ 在宅増で管理業務が拡大

 編集デスクA 今週末はいよいよ宅建試験。秋本番、資格試験の季節の到来だ。

 記者B 今年は試験対策の講座やセミナーなど、各所で新型コロナウイルスの感染防止策が講じられています。もちろん賃貸や売買の取引の現場では、新しい働き方が実践されている1年ですね。

 A 「住宅新報」でも、年2回、春・秋恒例の家賃調査の季節を迎えた。賃貸現場の市況やトレンドをヒアリングする取り組みで、読者である不動産現場の皆様にも毎回協力していただいている。

 B 春はコロナの感染拡大と重なり、我々の調査にも難しさがありました。秋の調査では、今春以降の顧客動向も関心事項ですね。 

 A リクルート住まいカンパニー「スーモ」編集長の池本洋一氏は、19年度の賃貸市況は「高入居率が続き、オーナーには堅実な1年」と総括した。新築賃貸の減少、分譲マンションの高止まりなどを背景に、グレードアップのための住み替えが進まない状況があった。春先はそこにコロナによる契約の延期や引っ越しの見直しが重なった。

 B 同社が毎年まとめている賃貸契約者動向調査(首都圏)からは「ウェブサイトで物件を取捨選択してから訪問する」という昨今の消費者トレンドが19年度も確認されました。減少傾向だった敷金額は下げ止まり、礼金は3年連続で平均0.7カ月分となるなど、昨今の入居率の改善を受けていわゆる「ゼロゼロ物件」の契約割合の増加が一服しています。

 A 同調査における満足度の高い住宅設備では、上位の「24時間出せるゴミ置き場」や「無料インターネット完備」を除くと、「スマートキー」の上昇率が目立つ。設備追加に対する賃料上昇を認める家賃許容上昇度に着目すると、一人暮らし世帯ではプラス2200円と大きい。施錠の手間を省く利便性やスマートフォンを中心としたライフスタイルの変化が背景にある。

 B 「賃料上昇許容額」では独立洗面台やシステムキッチンなどの項目で学生の金額が突出しています。これは若年層の実家の標準仕様であり、一人暮らしの際も当然のように望むものを意味します。満足度の高い設備は、オーナーおよび管理会社が入居者への差別化、入退去率の改善に有効な手立てとなります。

 A コロナ禍で入居者ニーズはどう変化しただろうか。池本氏は、(1)オンライン接客対応、(2)管理会社のクレーム対応、(3)ワークスペース需要――を指摘する。例えば(2)(3)では在宅勤務が推進された中で上下階や隣住居との騒音トラブルが問題となり、管理会社へのクレームが増加した。

 B 先日取材した全宅管理の佐々木正勝会長(6面に関連記事)も、ステイホームの拡大、在宅時間の増加に伴う近隣住戸の騒音や共用部分の使い方などに関するトラブル事例を紹介。住宅設備の利用頻度の増加による補修依頼の増加も指摘していました。

 A 不動産オーナーには入居者ニーズに合わせた再投資が求められる訳だが、断熱、遮音効果もある内窓の性能向上は費用対効果がよい対策例となりそうだ。共同住宅の空室を共用のワークスペースとして貸し出す取り組みも出てきている。テレワークは今後も一定の浸透が見込まれるため、住まい探しの選択肢は増えるはずだ。

 B 秋以降、法人の転勤需要とは別に、企業の上半期の業績悪化を受けて給与等への影響も懸念されますね。やはり全宅管理の佐々木会長も自社の管理物件における賃料減額要求や解約への対応を紹介。テナントの賃料対応に加え、今後は居住用入居者の経済状況にも注視していました。管理業務の拡大という現状を受け止めた上で、「オーナー、入居者双方の利益を守る地域の属人として循環型産業に携わっていく」と決意を表明していました。

 A 「賃貸住宅はセーフティネット」という観点から業界を挙げてBCPガイドラインの作成を進め、危機的状況に立ち向かう指針の共有が求められる。仲介会社もまた、駅距離のある物件や築古物件を逆手に取り、あえて「築古だがリフォーム済み」など家賃の金額帯が下がるエリアを提案の選択肢に加えるなど、「生活を防衛するための賃貸」という視点も提案の中に持つべきだろう。

 B 我々はその辺りも意識して調査に臨む必要がありますね。