先日公表された21年度の概算要求は7年連続で100兆円を超える見通しとなった。コロナ禍によって、1カ月提出期限が延長された異例の今回の概算要求だが、その内容も異例だ。
要求額を対前年度と原則同額にするよう財務省が要請。ただし、新型コロナウイルス感染症の対応など〝緊要な経費〟については上積みが認められており、同省では、自然災害対応のほか、「観光の再生と新たな展開」「今後の経済情勢を踏まえた住宅対策」などを予算要求額を明示しない事項要求とした。
一方、同日併せて公表された税制改正要望についても、新型コロナウイルス感染症対策と防災を重視したものとなっている。中でも、21年度は固定資産税の評価替えが行われる年に当たるとして、これまでも行われている同税の負担軽減措置の延長と共に評価基準日(20年1月1日)以降の地価下落なども考慮して経済状態に応じた所要の措置を要望した。
このほか、住宅・不動産関連団体が要望していた期限措置の延長や今年6月の法改正に伴うマンション再生事業における建て替えの支援措置などが盛られている。
今回の概算要求・税制改正要望を見た第一印象は、「手堅いが新味を感じにくい」というものだ。新型コロナウイルス感染症の影響がはっきりと見通せない現状、これは致し方ない。予算の編成方針も、前年度と原則同額という足かせがあるし、新しい措置は金額を明示しない事項要求で行っているのだから、曖昧模糊となるのもむべなるかなだ。
例えば、コロナ禍の中で急速に普及が進んでいる「テレワーク」については総務省などで更に推進する予算措置をとろうとしている。呼応するように国交省・観光庁も「働き方改革とも合致した『新たな旅のスタイル』の普及・促進」を施策とし、ワーケーション等の需要に応じた環境整備を行っていくとしているが、いかんせん事項要求のため、どのくらいの規模で進めるのかが分かりにくい。
本来であれば、メリハリを付けた予算措置によって施策推進を加速すると共に、例えば、関係団体が要望していた二地域居住住宅・宅地への住宅ローン減税適用など、それを補強する税制改正要望が行われることで、新施策のアクセルが踏まれたのではないか。その意味で言えば、これからの財務省の判断でどのくらい上積みが認められるのか、また国土交通省の具体的な施策が注目される。
本紙としては、かねてより推進を訴えてきた「住宅セーフティネット制度の充実・強化」、「既存住宅流通・リフォーム市場の活性化」といった昨年度から予算が上積みされた施策はもちろんのこと、事項要求である「今般の経済情勢を踏まえた住宅対策」を重視している。新しい住宅ポイント制度や「新しい日常」に対応したデジタル化の進展などの出現を期待する。