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ニュースが分かる! Q&A 20年の基準地価は一転下落 税への影響にも注目

 業者A いやあ、予想はしてたけど落ちたねえ。

 業者B 何の話ですか。宅建試験ですか。

 A まだ受けてもいないよ! 本番2週間前だというのに縁起でもないな、君は。

 B じゃあ何ですか。体力ですか、評判ですか。

 A 都道府県地価調査、いわゆる基準地価だよ。ここ数年は緩やかな上昇傾向にあって、「下落」が「上昇」に転じる流れだったのに、今年は全国全用途平均が3年ぶりにまた「下落」に転じたんだ。

 B なるほど、確かに新聞で見ましたね。我々としては心穏やかではいられません。

 A だろう。国土交通省は「新型コロナウイルス感染症の影響による不透明感から不動産需要が弱まった」ことを主な理由に挙げていて、特に宿泊施設や商業施設のニーズが高いエリアで上昇幅の縮小や反転下落が見られる。

 B 確かに、売りも買いも様子見が広がってますね。

 A 肌感覚でも分かるだろう。予兆もあったからね。

 B そういえば、さっき落ちると予想していたって言ってましたね。

 A そうそう。

 B 宅建試験に。

 A 受かってみせるよ! そうではなくて、8月に国交省が公表した「地価LOOKレポート」で、それまでの上昇傾向に歯止めがかかっていたんだ。四半期に一度、高度利用地の地価動向を調査する〝先行指標〟ということで、ある程度参考になるのさ。

 B それで予測できたと。

 A そういうことだね。しかし実際に公表されてみるとインパクトは大きいな。

 B 基準地価ではどんな特徴が見られたんですか。

 A 一つは三大都市圏でも地価の伸びにブレーキがかかり、特に名古屋圏では住宅地・商業地共に8年ぶりに下落に転じたことだ。

 B コロナの影響って京都とか沖縄とか、インバウンド人気の高いところのイメージがありますけどね。いや名古屋も人気はあるでしょうが。

 A 名古屋も市中心部ではホテル等の需要減の影響が大きいみたいだ。しかし国交省の担当者は、「名古屋圏は自動車産業をはじめ、航空関係など製造業が盛んな地域。同感染症の影響による生産活動の低迷で、工場地や周辺住宅地などの需要減退が地価に表れた」と分析している。

 B なるほど。では工業地も下がった?

 A 工業地については、全国平均が前年比0.8ポイント減の0.2%増で、上昇幅こそ縮小したものの住宅地や商業地のように「下落」には転じていないね。これは工場のようないわゆる〝工業〟需要というよりも、コロナ禍でむしろ需要の高まったECなどを支える物流施設用地としてのニーズが背景にあるようだ。

 B コロナの影響は大きいけれど、どこも等しく下がったわけではないんですね。

 A そうだね。程度の差はあれ、ほとんどの地域・用途で影響は見られたが、例えば住宅地よりも商業地、その中でもオフィスよりもホテルにおいて需要減が著しい。

 B そんなに大きな地価動向の変動となると、我々の商売だけでなく、様々なところにその影響は波及しそうですね。資産価値とか税収とか。

 A そうなんだ。7月1日に発表された今年の路線価を覚えているかい? あれは公示地価をベースにしていて、その評価基準日は1月1日。コロナ禍以前の価格ということで、国税庁は「路線価公表後に、全国の広範な地域で地価下落が確認され、時価と大幅な差が確認された場合には、路線価に一定の『補正率(仮)』を設定するなどの対応を検討する」としていた。つまり相続税等の額が変動するかもしれないんだ。

 B 〝大幅な差〟とは?

 A 20%程度以上というのが一つの目安だ。今回の地価変動は地域差も大きいので、実際に措置が行われるかどうかは国税庁の判断次第だね。

 B 要チェックですね。

 A 更に、9月25日に国交省が公表した税制改正要望では、3年に一度の固定資産税の評価替えの特例延長を求めると共に、コロナの影響による経済状況の変化に応じて、負担感軽減に向けた「所要の措置」も求めている。こちらも意識しておきたいな。

 B さすが詳しいですね。宅建もそれだけ熱心に勉強していれば、去年のうちに受かっていたでしょうに……。

 A 君は僕のことが嫌いなのか?