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アフターコロナでニーズ高まる物流施設 AI、ロボなど省力化に課題も

 コロナショックで多くの産業が苦境に立たされる中、物流業でも大きな混乱が生じた。新型コロナウイルスの影響により、国内貨物総輸送量は19年度通期で1.2%減、20年度には6.9%減と大幅な下降を記録した。

 今回のコロナショックではサプライチェーンの脆弱性が露呈した。東日本大震災の際、「ダイヤモンド型構造」(部材供給の階層が複雑で、特定1社に供給が集約)、供給経路が入り組んだ「メッシュ型」のサプライチェーンが要因となり、製造拠点に部品1個が届かないため完成品を生産できないなどの間接被害が全国的に派生した。

 この教訓をもとに、海外の製造拠点を分散すると共に、国内物流拠点では集約化から分散化へとリスクヘッジの観念が生まれたが、世界同時に見舞われたコロナショックでは、グローバルサプライチェーンの課題が浮き彫りとなった。

 国内では営業ができない外食産業を尻目に、店舗向けの食品の売れ行きは急増。緊急事態宣言による外出自粛から、外出を控えた消費者動向から店舗向け物流はパンク寸前まで追い込まれていった。

 そこで注目されたのがネットスーパー専用の物流施設だ。ネットスーパーは通常、店舗のバックヤードから商品をピックアップ、軽貨物やスクーターで届けるスタイルが中心。通常の物流とは似て非なるもので、既存の物流コストに追加コストを上乗せし、非効率な物流を前提に人海戦術で対応してきた。超高齢化社会による買い物難民ニーズも見据え、ネットスーパー専用の物流施設開発を検討する企業も見られる。

EC物流施設の拡大

 労働集約型産業と言われる物流業は、ドライバー不足のみならず物流施設内で従事するパート、アルバイトの確保が大きな壁となってきた。物流施設の運営には労働力確保が不可欠な要素とされてきたのだが、今回のコロナショックによって一時的なEC特需が生まれた結果、人手不足に拍車がかかった。

 ECを支える物流は各社が最も注力する心臓部となる。アマゾンジャパンは独自の物流網を構築、直販商品を販売するが、追従する楽天市場も物流ネットワークの強化に力を注ぎ始めた。配送サービスの強化に踏み切り、倉庫運営の効率化・省人化を目指す。

 ECの物流施設で欠かせないのが、店舗バックヤードの3倍必要だと言われる保管スペースだ。色、サイズ、材質など、バリエーションの多いアイテム保管が鉄則となり、品切れを起こしてしまった場合、コンシューマは別のネットショップで購入してしまう。また、ECセンターでは、ピッキングを行う際に手が届く高さをマックスに保管され、検品、梱包、返品された商品の再生などを行うスペースも必要だ。

 前述の通り、コロナ禍の物流施設では混乱が生じた。緊急事態宣言でパートスタッフたちは休校となった子供の世話のために仕事を休む中、コロナでECニーズが拡大したことで、物流施設での人手不足対策に手を打たないといけない事態となっていった。

 近年、事業所内の保育施設設置に補助金を出す自治体も増えるなど、全国主要都市適地で開発が進む大型物流施設に対し、行政側は雇用創出を期待する。一方で、物流施設側は開発段階で人が集まらないため、やむなく開発中止を決断する事例も見られる。

 アフターコロナで庫内に多くの人が集まることを回避する流れが見られる中、がぜん注目を集めるのが省人化を促進するマテリアル・ハンドリング機器だ。ロボット、AIはその代表格だが、ばく大なコストがかかるため、導入できる企業はほんの一握り。物流会社の99%以上を占める中小零細はAIではなく、ロジックによる機器で生産性向上を目指すシフトに傾いてきた。今後も続く労働者不足からこの流れは加速していくだろう。

 物流ジャーナリスト近藤学