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JLL・透明度調査、日本は16位 不動産テックや商習慣に課題

 JLLは9月10日、世界の不動産市場の透明度を分析した調査結果「2020年版グローバル不動産透明度インデックス」を発表し、オンラインで記者説明会を開いた。同調査は2年に1度発表。今回で11回目となり、世界99カ国・163都市を網羅している。ランキング上位3カ国は英語圏の国が占め、日本は16位になる。

 今回の調査では、サステナビリティの対象拡大、不動産テック分析の詳細化、伝統的な投資対象とは異なるオルタナティブ不動産への分析などを追加した全210項目で分析した。日本の透明度は前回から2ランク後退し、世界で16位。日本の透明度は毎回、改善されているが、透明度「高」レベル(上位10カ国)の中に入るためのハードルも上がっているのが実情だ。

 日本市場は上位10カ国と比較すると、「上場不動産インデックス」「不動産ローン規制」では上回るが、大きく下回るのは「コーポレートガバナンス」「財務情報開示」「テナントサービス」などになる。

 日本の透明度改善のポイントには不動産テックがある。不動産テックの普及に関するランキングでは35位にとどまり、スタートアップ企業への投資額も米国や中国と比べて大きな開きがある。また、ハンコ文化をはじめ、不動産取引における商取引の見直しが求められる。サステナビリティでは環境不動産の財務業績インデックス、建築物のレジリエンス基準、水利用効率基準などが今後の注目点になる。

 また、日本の特徴では都市間でのかい離も指摘された。都市別の透明度では東京が56位、大阪が63位、福岡が64位、名古屋が66位と、東京との間に開きがある。

 今回は世界の70%の地域で透明度スコアは改善したが、全体的な改善幅は1.1%。過去10 年間で最も低い水準になった。透明度の高い国は(1)イギリス、(2)アメリカ、(3)オーストラリア――の順になる(表参照)。今後の透明度の改善ポイントとして(1)ゼロカーボン&レジリエンス、(2)規制と法制度の変革、(3)ヘルスとウェルネス、(4)テクノロジーの起業環境と規格――が指摘された。

新型コロナの影響

 一方、説明会の質疑応答では新型コロナウイルス感染症の影響への質問も聞かれた。同社では新型コロナの影響で変わり続ける状況の中、議論が重ねられているという。

 環境、衛生面へのウェルビーイング(良好性状態)という考え方の高まりや、多様な働き方がオフィス市場に与える影響・見通しの変化、世界的な景気後退の可能性が指摘された。その一方、赤城威志リサーチ事業部長は「ウェルネス、福利厚生の話は働き方改革の動きの延長線。テクノロジーを活用してスマートビルをつくることも従前からある不動産テックの加速。新型コロナの影響で今までの進化が加速化する、少し方向性を変えながらより進化する、そういう理解が正しいのではないか。我々が進むべき方向がより明確に加速化されている」と見解を述べた。