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社説 民間賃貸住宅へのコロナ対策支援 大家・賃借人らに更なる支援策を

 新型コロナウイルスの影響への対応策として、店舗等事業用賃貸借のテナント家賃補助については、前回の社説で記した。これに対し、居住用建物、特に民間賃貸住宅に対する支援策はあまり知られていないのが現状ではないか。公営住宅については、各地方公共団体をはじめ、URなどの支援措置がある。しかし、民間賃貸住宅への支援の動きはあまり聞かない。

 賃借人は仕事・収入が減り、家賃を払えず、大家に賃料減額請求を行う。大家は、アパート等を建築するためのローンの支払いに四苦八苦する。また、サブリースにおいては、オーナーに約束した家賃水準を実行できないという苦難に陥る。問題の広がりは大きく、深刻だ。

 現在、民間賃貸住宅において行われている新型コロナ対策のうち、最も効果的なのが厚生労働省が行っている「住居確保給付金制度」だ。これは、休職・離職等に伴う収入減少により、住居を失う可能性がある者に対して、住居確保給付金を支給するというもの。この制度が強力なのは、支給方法が大家などへの代理納付という点、そして、支給期間が原則は3カ月だが、求職活動を誠実に行っている場合には、3カ月単位で最長9カ月支給を受けられる点だ。

 また、今回の新型コロナの影響により制度改正し、従来は離職等をしていないと支給を受けられなかったが、就業していても可能となった。更に、ハローワークへの求職申し込みも不要とした。

 このほか、国土交通省では、賃借人には、生活福祉資金貸付制度や特別定額給付金などを紹介。大家に対しては、政府系金融機関の実質無利子の融資や、固都税の減免措置などを挙げている。しかし、これだけでは不十分だ。

 まず、住居確保給付金は収入要件があり(例えば東京都のある区の単身世帯なら13.8万円)、これを上回ると利用できない。また、国交省が紹介している賃借人に対する対策は、これまでにあった施策や誰にでも配られる特別定額給付金などで目新しさはない。

 大家に対しても、政府系金融機関の貸し付けや税制上の措置などはあっても、賃借人の離職状態が長引けば、賃貸経営の基盤が崩れかねない。日本では従来から、住宅ローン控除など手厚い補助がされてきた持ち家に比べて、民間賃貸住宅は公的補助が少なく、その影響は今回のコロナ対策でも出ている。この際、福祉政策としての役割を踏まえた抜本的対策を検討すべきだ。

 具体的には、住居確保給付金の適用外にある賃借人への給付支援、大家に対しては、テナント賃貸支援に準じる措置をとること、事業者に対しては、雇用調整助成金や持続化給付金申請の緩和(証明書類などの簡略化)などを挙げる。今こそ、官民の知恵を出し合い、民間賃貸住宅の大家、賃借人に対する積極的支援を行うべきだ。