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ニュースが分かる! Q&A 気になる若年層の賃貸ニーズ 広さより室内設備、コスパ重視

 先輩記者A ゴールデンウィークも終わった。今年は新型コロナウイルスの影響から例年と様子が違った。我が家も外出を自粛したよ。

 後輩記者B 東京都が「STAY HOME週間」と発信していましたし、働き方、時間の使い方を見直した人も多かったでしょうね。

 A 当社では例年、春の賃貸繁忙期(関連記事6面)の振り返りの時期なのだが。どんな特徴が見られたのかな。

 B 進学や就職が決まっていた学生、新社会人など時限の決まったものを除いて、不要不急の転居が控えられたようです。昨秋の繁忙期では更新契約が目立ちましたが、春も空室率の低さが聞かれました。不動産情報サービスのアットホームが同時期に実施した景況感調査(20年1~3月)でも、新規問い合わせの減少や転勤者のキャンセル、部材の納期遅延による入居時期の遅れなどが、不動産店の声として挙がりましたね。

 A 四半期に一度、地場の不動産仲介会社を対象に実施している景況感調査だね。今期は新型コロナの感染拡大の時期と重なった。

 B ええ、その調査の中で30歳以下の若年層の部屋探しに注目してアンケート(n=1255)を実施し、5年前と比較しています。

 A 長期的に賃貸物件の利用を促す上で若者の視点は不可欠だから興味深いな。

 B それによると、取引件数の変化は学生、社会人(単身)、社会人(カップル・ファミリー)のいずれも「変わらない」という回答が最多で、半数近くを占めました。ただ、学生については「減った」が43.9%で、社会人(単身は31.9%、カップル・ファミリーは36.6%)の割合より多くなっています。

 A 部屋探しをする際に重視するポイントはどうだろうか。家賃、交通利便性、築年数など15の項目について「以前より重視」「変わらない」「以前より重視しない」の三択で調査している。

 B 「以前より重視」の回答割合が最も多い項目は「家賃」「室内設備の充実」「セキュリティー」「建物の新しさ」「内装デザインの新しさ」でした。不動産店からは「防犯面、おしゃれ、利便性等を重視する人が多い(北海道札幌市)」「設備やデザインを重視する(兵庫県神戸市)」などの声も寄せられています。

 A 室内設備が充実している点や外装・内装のデザインを重視する若年層が増えているようだ。

 B 他方で、建築資材や人件費の高騰で新築の賃料相場が上昇していますからね。「希望家賃相場が低くなっているにもかかわらず、新しい、きれいな部屋、セキュリティーなど希望条件は厳しくなっている。ニーズに合う部屋がなかなかない(東京都北区)」や「コストパフォーマンス重視の客が多く、築20年以上の物件でもリノベーションしていると成約する(東京都新宿区)」といったコメントもあり、室内設備へのこだわりと予算のかい離によって部屋探しが難しくなっている様子もうかがえました。

 A 「部屋の広さ」については、「以前ほど重視しない」と回答した割合が21.0%と、調査した15項目の中で3番目に多かった。アンケートに答えた不動産店のも「金額、設備、広さ、築年数だと広さを一番重視しない。ただ、実際に内覧をすると考える(東京都渋谷区)」や「部屋の広さより、設備の充実やセキュリティーを気にしている(東京都新宿区)」など、広さを妥協する若年層の多さを実感しているようだ。

 B そのほかのニーズでは、インターネット環境やクレジットカード決済が可能かどうか、スマートフォン決済アプリでの初期費用の支払い希望などキャッシュレス決済に関するコメントも多く見られたとのことです。

 A 部屋の探し方についても非対面で内見せずに申し込みするケースも増えていると聞く。賃貸顧客との接点の持ち方の変化に柔軟に対応していく姿勢が求められている。