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雇用・所得は要警戒 コロナの影響を点検 日本不動産研

 日本不動産研究所は4月22日、「新型コロナウイルス感染症が不動産市場に及ぼす影響」をテーマに不動産市場を点検する同所研究部の不動産エコノミスト、吉野薫氏によるコラムをホームページで公表した。どのような経路で不動産市場に悪影響が及ぶのかを整理、点検することが、今後の不動産市場の動向を正しく見通すための視座になるとの考えから、4月20日時点で入手可能な情報を基に同コラムを作成した。

 1点目の視点に掲げたのは賃貸市場。既に賃料支払い猶予や減免といった直接的な影響が顕在化したものの、終息後の回復は早く、また不動産の種別によって影響の度合いが異なる点を指摘している。一方で3月時点の企業の設備投資計画には意外な底堅さがあったが、今後雇用・所得環境が悪化する可能性があり警戒が必要だとしている。

 中でも「失業率の上昇や求人倍率の低下が顕在化するのは恐らく時間の問題だ」とした。12年から続いている景気回復は既にピークアウトか、景気回復の終盤に差し掛かっていた可能性もあり、加えて消費増税や暖冬といった景気の足を引っ張る要因も重なり、過度に楽観的な見通しには否定的な見方を示した。

 2点目は投融資環境の視点で、金融・資本市場でリスクオフの動きが強まったこと、不動産市場に対する期待感の消失、金融機関の貸し出し態度の硬化を挙げた。投資家の物件取得意欲や金融機関の貸し出し姿勢を損ない、不動産投資の需給の弛緩、取引の減退、利回り上昇を警戒すべきとした。

 3点目は資産ストックの視点を挙げた。新規ストックは、竣工遅延が相次げば実務的な影響は大きいとする一方、輸入停滞による供給制約との見方には疑問が残るという。既存ストックでは、テレワークが進む半面、コミュニケーションの場としてのオフィス機能の再定義が焦点として浮上すると予測した。その上で、不動産業界が多様なライフスタイルに応じた物件を供給することに社会的意義があり、投資機会もあると結んでいる。