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この人に聞く リクルート住まいカンパニー「SUUMO」編集長 池本洋一氏 新型コロナ影響下の現状 時差出勤が定着 立地などに影響

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のために、住宅業界も従業員の在宅勤務をはじめ、モデルルームや住宅展示場の休業・閉鎖などの取り組みが続いている。新型コロナの影響を踏まえ、現状や今後の施策、居住者の志向について、リクルート住まいカンパニー(東京都港区)で、不動産・住宅情報サイト「SUUMO」編集長を務める池本洋一氏に話を聞いた。(古賀和之)

 ――住宅業界における新型コロナの影響は。

 「領域ごとに違いがある。新築分譲マンションは大手が中心であり、モデルルームを閉じているところが多い。販売活動を自粛しており、顧客の動きも鈍っている。住宅展示場をメインにしているハウスメーカーも、新規顧客への接客はあまりなされていない状態だ。他方、分譲戸建てを扱う売買仲介や賃貸は状況が異なる。感染防止に配慮しつつ活動している会社が多い」

 ――新型コロナの影響下でも活動しなければいけない。

 「アメリカでは『エッセンシャルサービス』(生活に必須のサービス)の中に不動産取引が入ってきた。どうしても住み替えをしなければいけない人は一定数存在するし、契約直前の人たちは契約せざるを得ない。アメリカですら必要最低限のものは取引継続、接客という形になっている。日本ではITですべてを行えないし、対面接客を伴う行動は現実問題として行わざるを得ないケースはある」

 ――価格に大きな影響がある分野は。

 「それは新築の戸建て(分譲)、買取再販の中古マンション・戸建てではないか。用地や買取再販の物件購入から販売までの時間を短くし、その回転数を増やすビジネス構造だ。先行き不透明な状況下では早めのキャッシュ化が求められるので、価格を少し低くしてキャッシュ化していこうという動きが見られる」

 ――テレワークの浸透によって住まい手の考え方はどう変わるか。

 「(テレワークで)会議をする際は、ある程度締め切った空間でないと、外部の声が入ってしまう。個室空間への要望は増えている。狭くても駅近というニーズよりも、部屋の広さや室数へのニーズが生まれ始めている」

 「今後も、オフィスに通勤するという習慣自体は大きくは変わらないだろう。現在のように週5日在宅ということはないと思うが、長期的に見て、週に1、2日程度は在宅ができたり、時差出勤が定着するのではないか。それが住居の立地や広さの部分に一定の影響を与える」

大きなトレンド捉え

 ――住宅展示場が休業・閉鎖する状況で、ハウスメーカーの施策で必要なのは。

 「自粛要請が長引く可能性を踏まえ、オンラインで接客できる仕組みを整える必要がある。その仕組みを整えるには、社員の教育から顧客のリテラシーまで時間が掛かる。だから、新型コロナがいつ収まるかという予測値によっては(オンライン接客は)不要という経営判断もあり得る」

 「家選びの志向性として、家で集められる情報を集め、対面接客に臨むことは、若くなればなるほど、その傾向が強くなっている。体制の整備が判断軸になっていく可能性はある。消費者のニーズや情報収集、接客に対する態度変容など、大きなトレンドを捉えていくと、この機会に非対面でどこまでできるか、顧客のモチベーションや共感性を上げるコンテンツを強化していくべきだろう」