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最新技術ツール活用を イタンジなど リモートワークの働き方

 不動産テックサービスを提供するイタンジ(東京都港区)、スペースリー(東京都渋谷区)、WealthPark(東京都渋谷区)の3社は4月3日、在宅勤務などの「リモートワーク」の働き方を考えるオンラインセミナーを合同で開催した。新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、賃貸仲介会社などは急きょその対応に追われている。参加した不動産会社170人余は、感染の拡大が長期化する恐れのある中、最新技術ツールの活用による早めの対応が重要になる、との意識を共有した。

 WealthParkSaas事業部営業部長の石村裕樹氏は、不動産会社が取り組むリモートワークの現状や課題感について、同社での取り組みも交えながら解説した。「在宅や遠隔が意味されるリモートワークだが〝チームで働く〟という意味合いが強いと思う」として、リモートワークには、災害時などの際にも事業を継続でき、コストを削減しながら業務効率化や生産性を向上する目的があると提起。ワークライフバランスも実現するとして、「その体制づくりは、企業の魅力となり、優秀な人材が集まりやすくなる」など、メリットを強調した。

課題感も見えて

 一方で課題点についても不動産会社の声を取り上げて紹介。在宅勤務では、基幹システムとの連携や適切な勤怠管理、書類の押印とセキュリティの対策が必要になる。また、通勤の負担がなく、業務に集中できる一方で、孤独感や、子供の世話、誘惑の多い自宅環境でのモチベーションの維持、社内の情報共有から雑談までコミュニケーション上の課題などがあると説明した。ただ、現在は様々な不動産会社向けの最新ツールが普及しており、「その的確な導入が業務だけでなく、物件オーナーや入居者を守ることにつながる」と結んだ。

 スペースリー営業企画シニアマネージャーの岡田拡才氏は、同社が提供する仲介業務支援ツール「360度パノラマVRサービス」の紹介を中心に〝遠隔接客〟の利点を解説した。

 市販の360度カメラの撮影画像を活用することで現地に行かなくても内見できる利点を強調。戸棚などの内部や眺望写真などの情報を付加できる機能があり、必要な情報をワンストップで閲覧でき、「このURLをホームページに組み込み、リンク先を入居検討者に提示すれば、情報を容易に共有できる。非対面で部屋探しをサポートできる」とし、「搭載する分析機能は、入居検討者が何をどれだけ閲覧したかを解析できる。要望に沿った提案が成約率を高める」と紹介。更に今後、搭載するテレビ会議システムを使えばコミュニケーションを円滑にし、遠隔接客は新たな選択肢になると解説した。

なぜ導入するのか

 イタンジ執行役員経営戦略室長の青木千秋氏は、今回の事態を受けて広がっている「社員や顧客がリモートワークに抱く安全性の不安は、最新技術のツールで回避できる。ただ、単に導入するのではなく、その不安をなぜ払拭できるのかを社内でしっかり伝えることが重要」と説明した。また、同社ではそのネガティブなイメージを払拭したことで新たな発見も得たとし、「自宅で怠けていると見られたくないからこそ、業務に集中できた」という同社社員の声を紹介。しかし、コミュニケーションが希薄になりがちで、心の距離が遠ざかる危惧があると課題感も示した。

半数がテレワーク

 今回のセミナー終了後に、参加者170人を対象に新型コロナウイルス感染症に伴う影響とテレワークに関するアンケート調査も実施した。

 全体の83%が業務面で影響を感じ、既に「全社員」でテレワークを実施しているのは13%だったが、「一部社員」の導入を含めると42%と半数近くが実施中との回答を得た。

 また回答では、在宅勤務で影響が大きい点として、来店数の減少(42%)、内見数の減少(41%)が上位を占めた。テレワークの導入で不安な部分については、入居者の対応(51%)、物件の内覧(56%)が多かった。いずれも「対面接客」からの脱却の検討が必要となっている背景を浮き彫りにした回答となった。