総合

大言小語 病と経済のバランス

 ドイツの動物園で、飼育している動物を一部殺処分して他の動物の餌にする対策を検討せざるを得なくなったとの報道を目にした。

 ▼CNNの日本版サイトによれば、休園が続くノイミュンスター動物園は、動物の一部を安楽死させ、コストを削減。餌を調達する資金がなくなれば、他の動物を餓死させないために餌にすることを選ぶと園長が語ったと言う。

 ▼なぜ、このような苦悩と覚悟をせざるを得ないのか。3月15日からの封鎖措置で入場料収入がなくなり、寄付のみで存続しているからだという。ドイツ政府の経済対策で動物園への支援があるのか不明とのことだ。

 ▼新型コロナウイルス拡大防止のために、世界的に人が集まる場所に制限がかけられているが、それが病気とは関係がない動物の命を危険にさらしている。

 ▼日本のテレビ番組で、あるコメンテーターが、経済を止めてもいい、今は命が大事、経済は後からなんとかなるとの旨の発言をしたようだが、ドイツの動物園の件は、経済悪化が命を危機にさらす現実を端的に示す。

 ▼これは動物だけに限らない。人間も経済で命を落とす。景気と自殺者数との相関は有名だ。現状の対策は、経済を犠牲にした対策だ。だが、経済は後からなんとかなるほど甘くない。

 ▼命を守るには、病と経済の苦悩に満ちた困難なバランスを取るしかない。園長と同じ苦悩と覚悟は、我々にも向けられている。