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大言小語 誘惑に負けたくない

 思い返せば、大学3年生になるまで一人暮らしの住まいに固定電話はなかった。奨学金を受けて学費と生活費を自活で稼いでいた当時は、固定電話の加入権の取得は夢だった。大家の電話呼び出しで、友人とよくコミュニケーションが取れたものだ。だが今や、固定電話を敷かずに携帯電話だけの若者が多いとか。

 ▼新型コロナウイルス感染症対策でテレワーク(在宅勤務)が広がっている。国土交通省の調べで、同制度を既に導入済みの企業では半数が実施中。ただ運用の課題の一つが、インターネットや事務机など、仕事に耐えうる環境が自宅にないケースなのだという。また、テレビ会議システムが普及するが、部署内や部署間のコミュニケーションが取りづらいとの声も聞く。

 ▼不動産会社ではIT重説が解禁になったが、いまだ一般的なのは対面接客であり、在宅勤務は難しい。経営層が気になる点は、会社の目が届かない状況でも、社員がしっかりと働くのかどうか。日頃から働かないような人材は、在宅で急に心を入れ替えて真面目に働くわけでもなく、恐らくは現状維持でサボる。

 ▼問題は、普段は真面目な社員でも、自宅では誘惑や子供などに気が散り、業務効率や生産性を下げてしまうこと。だからこそ、こうした場面で、その社員の業務姿勢の真価が問われる。自宅で独りの就業でも、自律して働く社員を本当に育成できているのか。企業にも問われる点でもある。