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大言小語 データの大事さ

 名選手必ずしも名監督にあらず。よく言われるフレーズだが、この人には当てはまらなかった。元南海ホークスの捕手として戦後初の三冠王に輝き、監督として南海・ヤクルトで5度の優勝と3度の日本一にチームを率いた。野村克也氏が2月11日、84歳で亡くなった。

 ▼野村氏といえば、データ野球の先駆者と言われる。ミーティングを長時間行い、選手が何を考えて野球に取り組んでいるのかを露わにする。氏の右腕として、データを収集するスコアラーによれば、ランナーをけん制した後の球種、ファウルを打った後の配球。更にそのファウルがチップなのかホームラン性の当たりなのかまで求められたという。

 ▼さて、ここまでのデータを不動産取引ではしっかり集められているだろうか。もちろん、法定の重要事項説明に関する事項であれば、用意してあるのは当然だ。それ以外に、その物件について、あるいは顧客について、あるいは取引態様について、ユーザーの痒いところに手が届いているだろうか。AIに取って代わられる職業? AIにはデータ収集を行わせればいい。それを駆使し、ユーザーに満足をもたらすのは、人間味あふれる取引業者しかないだろう。

 ▼偉そうなことを書いている本人も、本当に読者に満足してもらえる情報を知らせるための努力をしているだろうか。巨星が墜ちて遺してくれたものは、とてつもなく大きい。