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社説 マンション管理〝見える化〟の動き 住民の意識が資産価値を守る

 平均寿命が男女とも80歳を超えているのに、マンションは築40年にもなると建て替え問題が浮上する。永住意識が6割を超え、終の住み処としての役割が増しているにもかかわらず、これでは心静かに老後を迎えられる保証がない。一生に一度の買い物といわれる住宅の寿命が、人間の寿命よりも短いという問題に真剣に取り組まなければならない。

 RC造のマンションの耐久性(建て替えまでの年数)を延ばすには、定期的な大規模修繕などを実施していくことが欠かせない。そのためには、長期修繕計画を立て、それを確実に実施していく管理体制がなければならない。そうしたマンションの管理状況を〝見える化〟して購入検討者の判断指標にしようという動きが本格化している。しかし、マンションの管理状況を公開することについては、様々な課題が立ちはだかる。

 例えば、そうした情報をいつ、誰に提供するのかという問題だ。特に管理に関する情報の中でも、修繕積立金の積み立て状況や管理費滞納状況などの取り扱いは極めてナーバスな問題である。それを購入検討者だけに開示するにしても、契約の意思を示していない段階で提供することには、管理組合側(区分所有者)の抵抗は大きい。とはいえ、購入者側にしてみると、近年は最も気になる情報と言っていいだろう。

 ここで考えなければならないことは、そもそもマンションとはどういう住宅かということである。一戸建て住宅とは違い、上下左右の住戸とハード的に切り離すことができない特殊な住居であることを改めて認識しなければならない。共同住宅である以上は、民主的な手続きのもとに管理運営をしなければならないし、その管理状況をオープンにしてこそマンションとしての資産価値が維持できるということを認識しなければならない。

 それがネガティブ情報であっても、管理組合が総意として公開を認めた場合には、個々の区分所有者は同意すべきだろう。管理組合も管理状況をオープンにしていくことが長い目で見ればマンションの資産価値を維持することになると判断した場合には、個々の区分所有者を説得する必要がある。つまり、マンションは区分所有者同士のコミュニケーションが最も大事な居住形態だ。

 マンションはもともと、隣近所を気にせず、気ままに暮らせる居住形態として登場した。それが今は皮肉にも戸建て住宅よりも制約の多い居住形態になろうとしている。これも時代の大きな変化だ。しかし、隣近所との意思疎通を図り、日頃からコミュニティ形成に努めていかなければならないマンションだからこそ、住む楽しさがあるとも言える。共有の資産価値を守り、流通性を確保していくための〝見える化〟は、民主化のもとで楽しく住むための第一歩である。