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社説 大型台風で甚大な水害 減災につなげる地域守りの共助

 昨年の西日本豪雨、9月の台風15号に続いて、今月12日から13日にかけて東日本一帯を通過した台風19号が再び各地に甚大な被害をもたらした。近年の台風や豪雨、暴風雨は、局地的に被害をもたらしてきたこれまでの災害とは異なって、想定をはるかに超える風雨を伴い、しかも広範囲に被害を及ぼしているのが特徴だ。今回も、東日本域にある74河川、135カ所で堤防が決壊したのをはじめ、東海、関東、東北の各地の河川が氾濫するなどの浸水被害が同時に発生して、多数の死者、行方不明者、負傷者を出した。

 幾度となく起こったこれまでの自然災害の教訓として、災害を避けることはできず、被害を最小限にとどめる「減災」の有効性が指摘されてきた。そのためには、国や地方公共団体による「公助」、地域コミュニティーの助け合いに基づく「共助」、それに「自助」のいずれもが欠かすことができず、これらが組み合わさることで減災の効果もより大きなものにできる。「地域守り」を標榜する不動産業も、平時から減災の意識を高めておくことで、「共助」で果たせる役割は大きなものになる。  今回の住宅の被害については、10月25日時点で全壊459件、半壊2653件、一部破損が4340件に上っている。床下と床上を合わせた浸水被害は6万7000件に達し、更に増える可能性がある。住宅の被害が深刻だったことに加え、電気、水道などの生活インフラや、道路、鉄道といった交通インフラにも被害が広がっており、復旧の妨げともなっている。

 今回の災害で特に注目しておきたいのは、避難指示が9都県40市町村で、避難勧告が17都県228市町村でそれぞれ発令されて、その対象となったのが約324万世帯、731万人にも達していたことだ。被害が表面化した以外にも、更に広い地域で多くの生活者が水害のリスクにさらされていたと思われる。

 被害状況が徐々に明らかになる中で、いくつもの問題点が浮かび上がっている。中でも、避難するべきか判断に迷い避難しなかった多くの人の中に一人暮らしの高齢者が目立ったことと、避難先の収容力に限界が生じたことは深刻で、早急な対策が必要だ。適切な避難の判断ができるかは非常時における初動対応の基本だ。とりわけ生活弱者にとって避難の「共助」は生命線といえる。今回は初めて、近隣の指定避難先ではなく、他の市区町村への避難を促す「広域避難」も一部で実施された。国の復旧活動と並行して住宅・不動産業団体も仮設住宅の支援や民間賃貸の情報提供などに取り組み始めている。大地震などへの備えとはまた異なった意識と行動が求められる大規模な水害への対応が求められている。地域住民の住まいと暮らしに携わる不動産業は、「共助」で地域貢献し、減災をより確かなものにしてもらいたい。