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大言小語 託せる人はいますか?

 〝信託〟というと庶民には縁遠いものと思われてきたが、ここにきてテレビや雑誌等でも〝家族信託〟という言葉をよく見かける。言葉の通り、不動産や預金などの資産を信頼できる家族に託して、その管理や処分を任せる仕組みだ。

 ▼背景にあるのはやはり認知症への恐れだろうか。親を介護施設に入れるための費用を捻出しようとして自宅を売却しようとしても、親が認知症になって判断能力をなくしてしまうと、子供であっても処分はできない。そうなる前に不動産を処分する権限を子供に託しておくのが家族信託だ。つまり、家族信託は空き家を増やさないためのツールにもなっている。

 ▼ところで、認知症は長くなった体の寿命に、脳の寿命が追い付いていないために起こる病気とも言われる。脳の寿命を伸ばすためには年をとっても夢や希望を持ってワクワクしながら生きることが大切らしい。認知症が増えている背景として、何かそれを阻害するものが今の社会にあるのだろうか。そういえば先日、夫婦が老後に必要な資金は年金のほかに2000万円という金融庁の報告書が大きな話題になった。

 ▼もはや国に頼るのではなく、自分や家族、そして何かあった時には近隣住民に頼るべき時代なのか。自助・互助・共助の時代になってきていると言っていいかもしれない。家族の絆を強める家族信託は、まさに時代の要請だ。あなたはだれか託せる人がいますか?