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社説 エリアマネジメント 地域業者の「強み」、大企業との連携も

 大手企業が所有する遊休不動産の活用は、新たな段階を迎えている。パナソニックは、新たなCRE(企業不動産)活用モデルとして、東京都品川区天王洲の遊休資産を使ったコワーキングスペースや次世代オフィスラボ、交流スペースなどの都市型複合ビル「テンノウズリム」を6月に開業した。パナソニックの井戸正弘執行役員は、「リノベーションとエリアマネジメントモデルによる新しいCRE戦略」と意気込んだ。

 パナソニックは、小規模な遊休不動産を使った「小さなビジネス」(井戸執行役員)をエリア全体に波及させる「エリアマネジメント」(エリマネ)で、新たなビジネスモデルの構築を試みる。エリア価値を向上させることは、エリア内に持つ自らの資産価値を維持、向上させることを可能にするからだ。こうした理由から、エリア価値を向上させる手法として、大手企業もエリマネに注目し始めている。

 もう一つは、パートナー同士の「強み」を掛け合わせることで、新たな価値を創出するという点だ。パナソニックは、今回の取り組みにおいて、以前から天王洲エリアでエリマネを手掛けていた寺田倉庫をパートナーとした。寺田倉庫は、一般社団法人を立ち上げて、天王洲運河や倉庫の壁面使ったイベントや映画上映を行っている。元々は倉庫街である天王洲エリアは、バブル崩壊後に閑散とした時期もあった。その後、周辺エリアにマンションが建ち並んでいく中で、近隣の人を呼び込むための地道な活動を続けてきた。そのかいもあり、天王洲エリアは今や活気があるエリアに変貌しつつある。

 また、寺田倉庫は所有する倉庫を貸しイベントスペースにして、床面積当たりの賃料をアップさせている。エリアの活性化として始まった取り組みが、ビジネスへも効果が波及している。こういう意味でも、エリマネに着目する理由が分かるだろう。

 今回の天王洲エリアの事例は、大手企業がエリマネに取り組む地域業者や団体と手を組む可能性を示唆するものと言える。それは、これまでになかった動きだ。従来も全国各地で行われている小規模な不動産をリノベーションする取り組みにおいて、地域の不動産業者が地域の不動産事業に詳しいという「強み」を生かして活躍している事例はあった。更に、川越市のように、商店街の活性化を担うまちづくり会社が宅地建物取引業者となっている事例も珍しくなくなっている。

 地域の不動産企業には、地域に根付いた活動を継続できるという「強み」もある。それも大手企業と連携する余地になっている。ビジネスになりにくいと言われているエリマネのスキームを、今一度見直してもいいのではないだろうか。