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社説 中古住宅流通市場、堅調続く 価格高騰、「安心R」など課題も

 ここ数年、官民がこぞって〝再生〟してきた中古住宅流通市場が堅調な動きを続けている。東日本不動産流通機構がこのほどまとめた、18年度首都圏不動産流通市場動向によると、首都圏における中古マンション、中古戸建て住宅の成約件数は2年ぶりに前年度を上回った。特に中古マンションの成約件数は、3万7601件で前年度比1.2%増。過去最高の成約件数だった16年度を上回った。

 大手仲介会社の社長に聞いてみたところ、リテール(個人向け)は好調で、こうした市場動向は今後も続くのではないかとのこと。中古におけるマイナスイメージや価格の不透明さが、国の政策と民間事業者のサービス開発などにより払しょくされつつあることがその要因の一つといえるだろう。

 堅調な動きを見せている中古住宅流通市場だが、先行きにやや不安な点もある。その一つはマンション価格の高騰だ。成約物件のm2単価、物件価格は上昇しており、m2単価はこの6年間で35.4%も上昇している。18年度成約件数は過去最高と記したが、地域を見ると、東京都区部および東京都全体は前年度を下回っている。価格高騰についていけない消費者の姿が容易に見てとれる。新築マンションの供給不足が喧伝される中、中古マンションにおいても同様の傾向が出てきている。

 もう一つは、中古のマイナスイメージや価格の不透明さが更に払しょくされると期待された「安心R住宅」の〝伸び悩み〟だ。制度開始から1年。近々にはその流通実績が出る予定だが、昨年9月末段階では482件にとどまっている。中小不動産事業者などの話を聞くと、認知度が全くないに等しいと辛口の評価だ。国土交通省の担当官も課題は、「周知を図ることと登録団体を増やすこと」としており、現状は十二分に認識している。

 中古マンションの「価格高騰」については、東京周辺の神奈川、埼玉地域の成約は伸びており、価格が高くなってもついていっている。今後、晴海の選手村跡地などの放出による下落も見据えながら、調整が働いてくるのではないか。

 中古戸建てがほとんどを占める「安心R住宅」については、登録団体が9団体となった。団体の特色もそれぞれに異なるため、消費者に十分訴求できるものとなっている。登録そのものも厳正に行っており、申請したがはねられた団体もある。消費者に安心して中古住宅を購入してもらうには、この方針でいい。ただ、それが知られていない状況では、何もならない。「安心」「きれい」「わかりやすい」中古住宅の基準を示した「安心R住宅」について、マスコミを使ったキャンペーンや登録団体の消費者セミナーといった施策により消費者、事業者の認知度をアップさせる。それが普及を更に進め、中古住宅流通市場の更なる成長につながるはずだ。