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大言小語 防火活動を

 カンカンカン―。年末年始の実家近くでは、こうした拍子木の音が近所に鳴り響いていた。自治会や消防団の人だろうか、「火の用心」の注意を呼び掛けていた。上京して都心に住む今では、なかなか見られない懐かしい風情となっている。

 ▼火事といっても、現代はインターネット上で発生している。いわゆる〝炎上〟騒ぎだ。政治家や経営者、芸能人、スポーツ選手などの不用意な発言に対して、一般の閲覧者や〝ネット民〟と呼ばれる一日中ネットにかじりついている人たちが噛みつく現象だ。

 ▼舞台となるSNS(ソーシャルネットワークサービス)では、匿名性から好き勝手に誰もが自由に発言できる時代になった。罵詈雑言のたぐいの発言は責任を持って記名すべきだろうが、とかく、権力に対する発言は、匿名のままでもいいと感じている。

 ▼先日、国道拡張工事に伴うビル立ち退き交渉に関連し、兵庫県・明石市長の職員への発言「火付けてこい…建物壊してこい…」がまさに〝炎上〟した。この発言の録音が切り取られ、後半部分での、同地での交通死亡事故を防ぎたいと願う市長の〝真意〟は、当初は伝わってこなかった。

 ▼不動産取引にはトラブルがつきものと言ってもいいが、火消し役でなく、事前の防火活動、円滑な交渉が最も大事だろう。地域に密着する不動産会社が同様な立ち退き交渉をしていたならば、事態はどのように推移していたのだろうか。