政策

社説 高齢者の新築需要は意外に旺盛 官も民も多様な居住形態模索を

 高齢者の新たな住宅取得ニーズは意外に旺盛だ。住宅金融支援機構が提供している60歳以上向けの住宅ローン「リバースモーゲージ型住宅ローン(リ・バース60)」の利用実績を見ると、17年度は前年比4倍強の174件に急増し、今年度もそれを大幅に上回る勢いで申し込みがきている。同ローンは〝リバースモーゲージ型〟であり、毎月の支払いは利息のみで、元金は亡くなったときに対象物件を一括売却して返済する。利用者の平均年齢は72歳だが、資金の用途として最も多いのが「新築マンション購入」で、次いで「新築戸建て建設」となっている。なんとこの2つで全体の7割を占める。一般的に想定されるバリアフリー化などの「戸建てリフォーム」は3番目だ。件数の急増は、従来はリフォームに限っていた資金使途を新築住宅の購入や建設にも広げたことが最大の要因だ。これにより、潜在化していたシニア層の住宅ニーズが一気に顕在化した。新たな資金調達手法が登場したことによって、高齢者が〝竟の住み処〟としての新たな住まいを取得したいというニーズは実は意外に大きいことが判明した。これはリタイア後の生活をより充実させたいという意欲の表れとも取れる。その際、留意すべきは高齢者の個々のニーズは、経済状況、身体事情などにより多様化している点だ。もう一つ留意すべき点がある。それは自立している高齢者向けの住宅がまだ少ないこと。官も民も、アクティブシニアが第二の人生を楽しむための住まいの選択肢拡大に力を入れるべきだ。

 日本人の平均寿命は現在、男性80.98歳、女性87.14歳。50年後には女性の平均寿命は90歳を超えると見られている。長寿化が進展する中で、こうしたアクティブシニアが元気で暮らし続けることができる住宅を開発することは、膨らみ続ける社会保障費の抑制につながるため、国の財政を助けることにもなる。つまり、高齢者向け住宅には本来、暮らす人がより健康になるような〝健康増進住宅〟という要素が必要だ。

 そのためには、例えば共同生活(集合住宅)で自分にしかできない〝役割〟があったり、多様な世代との交流があることが欠かせないのではないか。その意味では多世代共生型シェアハウスと、サービス付き高齢者向け住宅との融合なども検討すべきである。また、第二の人生を楽しむ街の概念としてCCRCがあり、日本版CCRC構想の研究も進んでいるようだが、例えば、病気や要介護度が改善するCCRCに対して、国や自治体が報奨金を出す制度を検討してもよいのではないか。

 これから超高齢化が本格化する日本で、〝竟の住み処〟として最も重要な要件は、高齢者が最期まで元気で暮らせる環境を整えていくことである。