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大言小語 老いも若きも〝自頭〟で

 梅雨の季節はうっとうしいが、草花や樹木に目をやると、過酷な夏を生き延びる準備を余念なく進めるそのしたたかな生命力を感じる。植物でさえ、その命を大切に生きている。〝人生100年時代〟が目前に迫った人間も長い人生を無駄にしない覚悟が必要だ。

 ▼人手不足が本格化し、若者の就職戦線は〝売り手市場〟だとか。東京への人口流入が止まらない理由の一つに、地方の若者が仕事を求めて東京に集まって来るからという事情がある。しかし、東京に〝職〟があるのは、そのように人口が増え続けているからこそという説明もできるだろう。鶏が先か、卵が先か――である。

 ▼人口が多ければ多いほど仕事の量も種類も増えるが、仕事のやりがい、満足度となると話は別だ。地方は人口が少ないから、本当に住民の役に立っていることしか〝仕事〟としては成立しない。地方の仕事のほうが、やりがいという意味では豊かなのかもしれない。

 ▼これからも〝情報化〟の時代は続くだろうが、その先に待っている〝意識〟の時代に備え、自らの頭で物事を考え行動する力を蓄えておくことが重要である。これは若者に限らない。というより、リタイア後の長い人生の使い道に迷いがちな高齢者にこそ必要な心構えとなる。若者がその若さの価値に気付かないように、老いたときにも人はその〝老い〟の価値に気付かないものである。