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社説 民泊新法施行までわずか 健全な民泊を推進し、地域活性化を

 民泊の事業者登録制や営業ルールを定めた住宅宿泊事業法(民泊新法)が間もなく施行される。

 現在、民泊に関わる事業者として、民泊運営を行う住宅宿泊事業者、民泊管理業を行う住宅宿泊管理業者、民泊の仲介を行う住宅宿泊仲介業者の登録が行われているが、例えば、住宅宿泊事業者は724件(5月11日現在。民泊オーナーは少なくともその100倍はいると見られており、登録のスピードは鈍い。観光庁では、「事業を継続するかどうか、様子見の事業者がある」としているが、それにしても少ないのではないか。新法が施行となる6月15日に登録が間に合わないところが、その後きちんと登録を行う、あるいは廃業すればよいが、FacebookなどのSNSにより、これまで通り〝ヤミ民泊〟を行う可能性もある。行政にはしっかり監督をしてもらいたい。

 一方、民泊のニーズがある場所での過剰な規制も目立っている。確かに、住居地域に住む住民、特に分譲マンションにおいては、法律に則った民泊でも拒否感が強い。マンション管理業協会が行った、管理組合の民泊への対応状況を調査したところ、民泊への対応で「禁止方針」を決議したのは全体の80%に上り、「容認方針」は0.3%に過ぎなかった。本紙が地場の不動産会社に聞いた取材でも、ほとんどの会社が民泊に拒否感を示していた。

 こういうことも受けてだろう。ホテル不足で最も民泊のニーズがあると思われる京都市では、住居専用地域での民泊を、町家で営業する場合や家主居住型を除いて、冬の閑散期の60日に限定する条例を成立させた。宿泊者のマナーや事件などの心配や旅館業者などへの配慮もあるのかもしれない。東京の特別区など他の自治体でも住居専用地域での営業を制限する動きがあるが、民泊は、そもそも住宅を宿泊に利用する事業だ。住居専用地域で過剰な規制を行っては、民泊の行き場がない。地方自治体には住民の不安と民泊の促進について、うまくバランスをとって地域の活性化につなげてほしい。

 観光庁などの関係省庁は、住宅宿泊仲介業者の適正化協会設立を促し、エアビーアンドビーなど大手事業者を集め、健全な市場の形成を目指している。こうした動きを一層進めていくことが必要だ。

 また、住宅宿泊事業法では、180日ルールによる年間営業日数の限定があるため、旅館業法による簡易宿所の許可申請が急増しているという。民泊の規制逃れという1つの流れだが、簡易宿所営業ではどうしても狭小なものが大部分となる。旅行者の幅広いニーズをとらえ、ファミリーで来日する外国人に対応する、戸建ての家主居住型の民泊など、一時の空室対策にとどまらない、文化交流の礎となりうる健全な民泊が多く現れることを望む。