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社説 「かぼちゃの馬車」破たん 健全化へ〝横の監視〟も必要だ

 女性向けシェアハウス「かぼちゃの馬車」を管理運営していたスマートデイズ(中央区銀座)が経営破たんしたことによる影響が広がっている。シェアハウスの商品性や、サブリースで運営する不動産投資システムの信頼を揺るがしかねない事態でもある。

 ほころびが表面化してきたのは昨年10月頃。入居状況の低迷を理由に、管理運営会社がオーナーへの賃料支払いストップを通告する一方、オーナー側は損害賠償請求訴訟の動きに出る。そして4月9日、スマートデイズは民事再生法の適用を申請。東京地裁は同18日、申し立てを棄却、保全管理命令を出し、破産手続きに移行する厳しい判断を下した。

 帝国データバンクによると、スマートデイズの負債額(18年3月末時点)は債権者911名に対し60億円余(うち23億円が物件オーナー675名)。だが、建設から運営まで一貫した投資運用商品として、1棟当たり1億円以上で銀行融資を受けて物件を購入した投資家は約700人といわれる。融資には書類改ざんなどの疑いも指摘され、混迷の度を深めている。

 事態を招いた直接の原因は稼働率が低く、賃料収入が想定にほど遠かったことだが、辛辣な指摘も出ている。まず建物が「シェアハウスの体をなしていない」という商品性への疑問。次に、そうしたレベルの低い住宅商品なのに「販売価格が高すぎる」という不動産の根幹に関わる疑念も拭い切れていない。更にサブリースによる運営システムは妥当だったかという疑問も残る。不動産・建築業者、融資した金融機関と管理運営会社まで、それぞれが事業に善意で取り組んでいたのかどうか。

 「かぼちゃの馬車」破たんに関して、創業者の人物像から販売・運営システムをよく知る人は、当初からその事業姿勢に疑問を呈し、「被害者が増えないように」と警鐘を鳴らしていた。シェアハウスの「健全な発展」を願ってのことだったが、残念ながら未然に防止することは叶わなかった。結果、物件オーナーたちは厳しい現実と向き合うこととなった。

セカンドオピニオンも

 不動産投資は甘くない。まして素人が借金をしてとなると、大きなリスクが伴う。業界内には今なお、将来の年金不安を煽って、マンション投資を勧誘するテレビ宣伝などがある。それを見て「調子が良すぎる」「問題では」と指摘されるものは徐々に減ってきたようだ。不動産投資商品のことを最もよく知るのは同じ業界人たちである。消費者が甘言に騙されないように、また市場の健全な発展を図るためにも横のチェック体制、監視の目は欠かせない。併せて投資商品の妥当性などに関して、消費者が相談、確認することができるセカンドオピニオン体制を整備する必要もある。今回の破たんは、そのことを教えてくれる。