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社説 マンション修繕工事の適正化 管理組合の不利益を一掃しよう

 区分所有者で構成するマンション管理組合は、大規模修繕工事に関して大方は素人集団だが、十数年サイクルで積み立てた大金を取り崩して実施することになっているのが大規模修繕計画である。その大規模修繕工事を巡って、一部で〝バックマージンの授受〟など、不適切な取引が行われ、管理組合に不利益を与えているのでは、という問題が浮上している。

 本来、管理組合を支援する役割を担うのが改修設計コンサルタントや設計事務所、マンション管理士、管理会社と施工業者だが、その一部で、管理組合に損害を与えかねない不適切な取引が行われているとしたら、関係する業界の信用に関わる問題である。

 不適切な取引とされる問題の典型は、コンサルタントと工事業者間に関するもので、施工業者の選定での〝談合〟やリベート・キックバックの要求・授受の疑惑である。例えば、管理組合が選定したコンサルタントが施工業者に裏金を要求・受領しているとしたら、職業倫理に反するだけでなく、割高な工事費や低品質工事という損害を与える二重の背信行為を働くことになってしまう。こうした悪弊は早期に取り除かないと、国民の生活基盤であるマンションというストック財産の活用や流通にも悪影響を与えかねない。

 そんな中、工事を発注する側の全国マンション管理組合連合会と、受注する側のマンション計画修繕施工協会、日本マンション管理士会連合会、マンション管理業協会の4団体で構成する「マンション計画修繕工事適正取引推進協議会」(代表・川上湛永全管連会長)が11月14日、「適正取引に関する申し合わせ」を発表した。今年4月から3回にわたって協議してきた中間まとめだ。内容は、会員社や構成員に倫理綱領の徹底や適正取引に関する指導を行うこと、今後も「マンション関係団体連絡協議会」として協議を継続すること―。協議には国土交通省のほか、改修設計コンサルタント団体や設計事務所もオブザーバーとして参加していた。

適正取引協議会の役割

 協議会の川上代表は「この問題は実に幅広く、複雑で、『こうすればすぐに効果が出る』対策は難しい。また管理組合の状況も様々で被害意識が希薄なところもある。協議会としては、マンションに住む人たちのために幅広い観点からじっくりと協議を継続、検討していきたい」と話す。

 対策は今後の協議に委ねられるが、まず不適切な取引を排除する姿勢を明確にした上で、実態を把握、不適切な取引事例の数々を公表することを望みたい。問題を周知させ、注意を促すだけでも効果は大きい。そのため、協議内容や方向性などを逐次公表していく必要があるだろう。それが管理組合と共存する関連業界の社会的責務であり、存在感を示す方策である。