不動産業の公益性、社会性を高めるには人々の暮らしに具体的に役立つ仕事をすることである。空き家や空き地を活用して地域のコミュニティを再生したり、障害者や低額所得者などの賃貸住宅への入居をあっせんしたりすることである。飽くなき利潤追求のために〝おとり広告〟を仕掛けることなどもってのほかである。
日本は今後高齢者の数が増える。その人たちの老後の経済的不安を解消することも不動産業の重要な仕事になる。幸いなことに日本人の持ち家率は高い。60歳以上は約8割である。この貴重な資産を生かさない手はないだろう。従来から、金融機関によるリバースモーゲージはよく知られている。しかし、これは地価の高い高級住宅地に自宅を持っているような人たちが対象になる。また、一部の銀行を除けば、将来の担保価値算定が難しいことなどもあり、積極的展開を図っている状況とはいえない。
郊外にあるため、資産価値が下がっているような自宅しか資産がない高齢者の生活不安を解消、もしくは軽減することこそ真に公益性、社会性の高い仕事といえるのではないか。そこで注目されるのが、最近取引実績が増えている「自宅のリースバック」である。
様々な要因からまとまった資金が必要になったとき、自宅を売却して資金を得、その後は賃料を払いながらそのまま自宅として住み続けるというものである。某社は3年ほど前にこの事業を始め、既に600件以上の成約実績があるという。高齢期の突然の資金需要は意外な方向からやってくることもあるようだ。例えば子供が事業に失敗して借金返済に迫られたり、離婚して慰謝料を払わなければならなくなるなど、現代社会はリスクを増している。
もちろん、〝生涯居住権付き売買〟だから、売り値は相場価格よりも相当安くなることは覚悟しなければならない。ただ、リバースモーゲージは銀行から見れば〝融資〟だから、将来の返済が担保されなければならない。それに対し、リースバックはあくまでも不動産売買で、その後は賃貸借契約だから事業者側のリスクは限定的だし、利用者にとっては仕組みが分かりやすい。したがって、不動産業のニュービジネスとなる可能性を秘めている。
資産価値が低ければ当然、手にすることができる額も小さいが、リバースモーゲージのように最初から門前払いをくらうこともないのではないか。更に言うなら、これを高齢者が取り残されたような郊外団地で進めた場合、将来は事業者(複数もありうる)と自治体が協議し、子育て世帯向けの戸建て団地に再生するなどのアイデアも考えられる。
持続可能な社会づくりに貢献してこそ、不動産業の未来が開けてくる。