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大言小語 独裁者は孤独だ

 彼の姿がテレビに映し出されることが頻繁になり、伝えられるのを見聞きするうちに、マイケル・コルレオーネのことを思い出した。外見はまったく似ていないけれども。

 ▼マイケルは若い頃、父の仕事を蔑んでいた。父ビトーはマフィアのボス。周りの者からは親しみを込めて「ゴッドファーザー」と呼ばれた。父の死後、マイケルは跡を継ぐ。すると彼は父よりも残忍なボスへと変わっていく。実兄ですら、たった一度の裏切りを許さず、無残にも殺害する。

 ▼現実の世界で、マレーシアの空港で兄が殺されたとき、弟である彼は何を思ったのだろうか。「兄弟は他人の始まり」という。また肉親というものは、時に激しく憎み合うことも、私たちは知っている。それでも彼は悲しんだのだろうか。一滴の涙を流したか。それとも目的を果たしたことで、笑みを浮かべたのか。そのとき、彼の周りの人間は、はたして何を思ったのだろうか。

 ▼マイケルは仕事で父以上の成功を収める。しかし、妻と子どもに去られ、孤独に生きる。人望の厚かった父とは異なり、たった一人。結句、目の前で娘を殺され、悲嘆のうちに死ぬ。

 ▼独裁者とは時に孤独な存在だ。歴史が証明している。側近を粛清しているというが、彼に胸襟を開くことのできる相手は今いるのだろうか。事を深刻にしないためにも、誰か手を差し伸べてもいいのではないか。